「元・日本一有名なニート」としてテレビやネットで話題となった、pha(ファ)氏。「一般的な生き方のレールから外れて、独自のやり方で生きてこれたのは、本を読むのが好きだったからだ」と語り、約100冊の独特な読書体験をまとめた著書『人生の土台となる読書』を上梓しました。
今回は、本書の発売を記念し、読書の作法について特別インタビューを実施。SNS上で度々議論となる自己啓発本の読み方について、phaさんに聞いてみました。(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)
自己啓発本は
「社会の中で頑張っていくための本」
──最近、SNS上で「自己啓発本ばかり読む人は本当の読書家とは呼べない」というような、「自己啓発本論争」が起きているのをたびたび目にします。phaさんは今回書かれた本の中で多種多様な読書の楽しみ方を提案されていましたが、自己啓発本についてはどうお考えですか?
pha:今回の本は「読書で人生の土台をつくる」をテーマに、僕自身が人生の中で影響を受けている本を紹介しています。一見、実用性がなさそうな小説やノンフィクション、学術書、マンガが中心のラインナップです。
僕は自己啓発本にはあまり興味がないんですが、それは「読書の目的」の違いだと思うんですよね。
──読書の目的の違い、ですか。
pha:僕は、大きく分けて二つの読書があるな、と思っています。
「社会の中で頑張っていくための読書」と、
「自分が自分のままでいるための読書」。
前者は、「社会の中でどうすればいいか」という実用的なことを教えてくれる読書です。例えば話し方の本とか、メモのとり方の本とか。そういう本は実用的で役に立つとは思います。
──たしかに。自己啓発本はすぐに活用できる解決策をわかりやすく教えてくれますもんね。
pha:でも、そういう本に僕はあまり興味がないんですよね。
僕は、「こうすればいい」というわかりやすい答えを教えてくれる本より、この世界はわかりやすい答えなんてない複雑なものなんだ、ということを実感させてくれる本が好きなんですよ。「人間はわかりやすい答えに飛びつきたがるけれど、それは危険だ」というのもこの本のテーマの一つです。
あとまあ自己啓発本は、「読むとやる気が出る」というのもあると思うんですが、僕は「やる気を出したい」「仕事をがんばりたい」ということをあまり思わないので、読まないんですよね(笑)。
「成功する」「結果を出す」だけが読書の目的ではない
──では、phaさん自身は、後者の「自分が自分のままでいるための読書」をすることが多い、ということでしょうか。
pha:そうですね。今回書いた『人生の土台となる読書』も、「自分が自分のままでいるために本を読む」が大きなテーマでした。
僕は「本を読んでなかったらもっと違う人生を歩んでいただろう」と思うけど、それは「読書によって自分自身が大きく変わった」という意味ではないんですね。むしろ、本を読むことによって、自分が自分のままでいることができた、社会によって変えられてしまうのを防ぐことができた、と思っている。
周りに自分のことを理解してくれる人がいなかったとき、心の支えになるのは本だけだった。「周りに左右されず、自分は自分のままでいい」と肯定してくれて、自信を持たせてくれた。それが僕にとっての「本」であり、「読書」でした。
──言われてみれば、「読書」をそうやって分類したことはなかったかもしれません。
pha:本を読む目的は人によってそれぞれだけど、そのときどきによって「社会で頑張るための読書」と「社会に左右されないための読書」、両方の読書を使い分けられたらいいんじゃないでしょうか。