東京地検特捜部は20日、5000万円余を脱税したとして、所得税法違反の罪で日本大学の前理事長田中英寿被告(75)=1日に理事長を辞任=を起訴した。大学トップとして13年にわたり君臨し、絶大な影響力を誇った田中被告。カネの面で支えていたのは日大元理事(逮捕後に辞任)の井ノ口忠男被告(64)=背任罪で起訴=で、井ノ口被告が取締役を兼務し実質的に仕切っていた関連会社「日本大学事業部」(以下・事業部)は「集金マシーン」と呼ばれていた。「日大のドン」こと田中被告の大学私物化と暴走を許したのは、井ノ口被告との蜜月関係と、田中被告の妻が経営する「ちゃんこ店」に通った歴代幹部だった。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
過去にも数々の疑惑が
取り沙汰された田中前理事長
田中被告の起訴状によると、大阪市の医療法人前理事長、籔本雅巳被告(61)=背任罪で起訴=らから受領したリベートなどを収入として確定申告せず、2018年と20年の所得計約1億2000万円を隠し、計約5200万円の所得税を免れたとされる。
井ノ口被告と籔本被告は、事業部が関わった日大板橋病院建て替え工事での業者選定や医療機器納入を巡る2つの事件で、経費のキックバックや取引に必要ないペーパーカンパニーを介在させる手口で、日大に約4億2000万円の損害を与えたとして逮捕・起訴されていた。
事件はひらたく言ってしまえば、両被告は学生から集めた授業料や文部科学省からの補助金をちょろまかして田中被告に上納し、田中被告はその金を確定申告せずに懐に隠していたという構図だ。