日本大アメリカンフットボール部の選手による危険タックル問題で、警視庁は5日、選手にタックルを指示したとして刑事告訴されていた前監督と前コーチについて「傷害の意図を持ったタックルの指示は認められない」と判断し、東京地検立川支部に捜査結果を送付した。選手については「処分を望まない」とする意見書を付けて書類送検した。スポーツ界を巡っては昨年、指導者のパワハラなどが相次いで表面化したが、この問題が最も注目されたと言っていいだろう。日大の第三者委員会や関東学生アメリカンフットボール連盟は監督らの指示を認定したのに、なぜ警視庁は違法行為がなかったと判断したのだろうか。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
不信招いた日大の対応
この問題を巡っては、日大が2016年に危機管理学部を設立していたにもかかわらず危機管理がまったくダメダメで、最たるものとして日大の記者会見を仕切った司会者が火に油を注ぐような対応をしたり、別の記者会見では「江戸っ子お婆ちゃん」が乱入したりと、深刻な問題なのにもかかわらずツッコミどころ満載だった。
こうした問題は割愛して、事件から時間が経っているので経緯をおさらいし、刑事処分に関わる部分について整理しておこう。
危険タックルは2018年5月6日、東京都調布市で行われた日大フェニックスと関西学院大ファイターズとの定期戦で起きた。日大のディフェンスラインの選手(以下、DL選手)が、ボールを投げ終えて無防備だった関学のクオーターバックの選手(以下、QB選手)に背後から激しくタックルし、全治3週間のけがをさせた。
関学側は12日、試合後の内田正人前監督のメディアに対するコメントが危険タックルを容認するような内容で、チームの見解とともに謝罪を求める抗議文を送付したと発表。日大は15日までに、謝罪した上で、指導内容と選手の受け取り方に乖離(かいり)があり内田前監督の指示ではないと説明。前監督のコメントは撤回するとの回答書を提出した。
関学側は17日、記者会見し「ルールを逸脱した行為を容認していたと疑念を抱かざるを得ない」とし、鳥内秀晃監督も「あのプレーが起こった時、なぜベンチに戻して指導をしなかったのか」と不満を表明した。