落合も新庄もどちらも
プロフェッショナル
落合がそこまで勝利にこだわった理由は何か。それは契約である。
契約っていうのは、それだけ重いんだ。オーナーと交わした契約書は家に大事にとってある。俺がやるべきことはすべてそこに書いてある。このチームを優勝させることってな。(『嫌われた監督』より)
プロだから契約の実現のために最大限の努力をするのである。優勝の可能性に向けてすべての行為の優先順位を考えるのである。
新庄もプロである。記者会見で「優勝なんか一切目指しません」と言ったが、きっと優勝を目指せなどと、契約書には書かれていないし、求められてもいないのだろう。その代わり、本来もっと輝いていなければならない若手選手を輝かせるのが、彼のミッションになっているはずだ。
メンタル的なところを鍛えながら、ピッチャー3人、野手4人のタレントを作り上げていけば、楽しいチームになるし、そういうタレントが生まれるということは全国に顔も名前も背番号も覚えてもらって、そのときにはもう強くなっている。そういうチームを作っていきたい。(監督就任記者会見コメント)
新庄の発信力と思いもかけない作戦で個々の選手たちに注目が当たるようにし、注目されることによって覚醒を導き、眠っている才能を引き出す1年にするのであろう。そして、こういうミッションだからこそ、自分が選ばれたということも深く理解しているに違いない。
新監督の登場による真新しさやアイデアの奇抜さは、最初は注目されるが、新庄ほどのスターであっても、それは何年も持つものではない。そうすれば、当人の商品価値も落ちる。今年1年あるいは2年、自己の人気をもとにして、選手を輝かせ、チームの実力を上げて、人気も上げて、さっと消え去るのが千両役者である。勝負にこだわるチャンピオンチームになるのは、次の監督にお任せで良いのだ。
よって、新庄がこれから行う仕事は、勝ち負けにこだわるいわゆる監督の仕事ではなく、太陽のような存在として、チームに光を与えるBIG BOSSという別の仕事なのだ。きっと彼なら、プロフェッショナルとして、見事に契約を遂行するだろう。