国民多数参加の一大イベント
ワクチン接種に数々のドラマ

 2021年に国内で推し進められたワクチン接種は、厚労省および首相官邸によれば2月に始まって、2回目接種完了者数は12月下旬に8割近くに達した。

 国を挙げての大規模な一大プロジェクトであるから、至らない点や新たに浮上した問題点が各所で確認されたのも、順当といえば順当である。勤務先や住む地域の違いによるワクチン接種格差や、ワクチン接種を強要する意識に端を発する“ワクチンハラスメント”について取り沙汰されるようになった。

 しかしこれだけ大きな、動きのあるイベントを多くの人が共有することも珍しい。たとえば消費税増税などは、生活への影響は甚大だが、施行されたらただ従うしかない。また増税後の金額に次第に慣れていくものなので、世論は喧々囂々(けんけんごうごう)となったが、人々の動き自体は静かである。

 一方ワクチン接種は、接種する意思を固め、予約し、会場に赴かなければならない。そして「2回打つべし」とされていて、消費税増税などに比べると、人々は格段に大きな動きを求められた。

 多数が体験を共にした“ワクチン接種”は、おのおのが自分なりのエピソードを持つ巨大な“共通の話題”となってSNSを賑わした。「今回は注射を褒められることが多い」と喜んだ(いつもは子どもたちに泣かれてばかりの)小児科医のエピソードや、接種会場として名乗りを上げたパチンコ店についての投稿がバズっていた。本来は味気ないまま終わりがちな“ワクチン接種”の中に、「少しでも楽しみつつやろう」とする人々のしたたかな息遣いと、その姿勢を評価しようとする衆目が感じられた。

 2021年と2020年は、鬱屈した日々を前向きに生きる人たちの気配を強く漂わせていた。特に2021年は、“再生”や“鬱屈からの解放”の一歩を踏み出した一年であったように思われる。いまだ予断を許さない状況は続くが、2022年はようやくの晴れ間を迎えられるかもしれない。