北京五輪、「外交ボイコット」が詭弁かつ危険である2つの理由写真はイメージです Photo:PIXTA

そもそも「外交ボイコット」とは?

 北京冬季五輪まで1カ月弱になった。今のところ中止も延期もなさそうな状況だ。

 ウイグル問題に加えてテニスの彭帥選手の人権問題が関心を集め、「外交ボイコット」の動きはあるが、選手の派遣を止める声は起こっていない。

 1980年のモスクワ五輪と84年のロス五輪の反省が生きているのだろうか。モスクワ五輪では旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議し、アメリカ、日本をはじめ65カ国が参加をボイコットした。4年後のロス五輪では旧ソ連と東欧諸国が報復的にボイコットした。この痛切な経験を通じて、「選手を政治の犠牲にしない」という国際理解が高まっている点は歓迎すべきかもしれない。

 しかし、「外交ボイコット」とは一体何なのか?

 ジャーナリストの上杉隆氏によれば、「3月にアメリカのニューヨーク・タイムズが初めて『外交的・経済的ボイコット』を提唱し、次いでワシントンポストが経済的という言葉を取って『外交的ボイコット』と書いた。さらにホワイトハウスのサキ報道官もこの表現を使って定着した言葉だ」という。

 スポーツライターから見れば、おかしな言葉でもある。彼らが言う外交ボイコットとは要するに、大統領や政府高官が「開催地の中国・北京に行かない」というだけの意味だ。