エイジングフレンドリーこそ
超高齢社会に必要な概念
しかし、この概念の欠点は、前述の住宅団地の高齢化に見られるように、「時間の経過による変化(経年変化)を考慮していない」ことだ。これが現状のエイジフレンドリーのもう1つの落とし穴である。
このため、エイジフレンドリー(age-friendly)ではなく、個人、建物・インフラ、コミュニティの経年変化(エイジング)に適応可能なエイジングフレンドリー(ageing-friendly)こそが、超高齢社会に必要な概念であると私は考えている。
この概念に近い例として、千葉県佐倉市にある「ユーカリが丘」が挙げられる。ユーカリが丘は1971年から開発が始まり、40年以上経過しているが、他の大規模ニュータウンと異なり、現在も居住人口が増え続けている。
最大の違いは、コミュニティにおける人口構成である。他の大規模ニュータウンでは団塊の世代を含む60代以上が全体の60~70%に達しているのに対し、ユーカリが丘では25%程度となっている。しかも、どの年齢層も同じ割合になっている。これは開発を特定時期に集中せず、時間軸で分散させて行なってきたことによる。
他にも、ひとり暮らしになって一軒家を持て余している人にわずか150万円程度でマンションに移り住み可能な仕組み、子育て世代の負担軽減のために鉄道駅そばへの保育所の設置、買い物困難な高齢者向けの団地内周回バスなど、さまざまな工夫を施している。
ユーカリが丘は、特定の世代だけでなく、すべての世代に親和性が高く、安心して住み続けられるコミュニティを目指している。超高齢社会における街づくりを示唆している先駆例と言えよう。
世界から注目されている
日本のシニアビジネス動向
日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は、2012年現在、推計で24・1%に達した。この数値は世界一である。この「超高齢社会・日本」の動向は世界各国から注目されている。
私は、直近の2年間だけでも、アメリカ、イギリス、ドイツ、スイス、韓国、シンガポール、香港で開催された国際会議やカンファレンスに何度も招待講師として招かれている。
また、EUやスウェーデン大使館、イタリア大使館などから講演会に招かれる機会も何度かあった。さらに、アメリカ、イギリス、スウェーデン、デンマーク、ブラジル、シンガポール、香港、中国のメディアからも何度か取材を受けている。