「企業活動のシニアシフト」は
他の国でも必ず起きる
国連の定義によれば、高齢化率が7%を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」という(ちなみに21%を超えると「超高齢社会」というが、日本は2007年から超高齢社会になっている)。
皆さんは、2030年までにアフリカや中近東を除く世界の多くの国が「高齢化社会」に突入することをご存じだろうか。ますます混沌とする世界情勢のなかで、世界中で確実な構造的変化は「人口動態のシニアシフト」なのである。
したがって、日本で本格化した「企業活動のシニアシフト」は、これから他の国でも「人口動態のシニアシフト」につれて一定の時間差をおいて必ず起こる。特に高齢化率の高いヨーロッパでは、近い将来間違いなく起こるだろう。
だから、日本企業は、いまのうちに切磋琢磨して、自社の商品・サービスに磨きをかけることだ。そうすれば、それらの商品・サービスは、一定の時間差をおいて「人口動態のシニアシフト」に直面する他の国から必要とされるようになる。
つまり、シニアビジネスは「タイムマシン経営」によって、規模がグローバルになるビジネスなのだ。ここでいう「タイムマシン経営」とは、高齢化に伴う課題に真っ先に直面する日本でまず商品化し、それを一定の時間差をおいて同様に高齢化に直面する他の国や地域に水平展開するということだ。すでに一部の介護サービス企業が、中国などに進出しているのは、この「タイムマシン経営」に近いものと言えよう。
一方、連載第1回で紹介したユニ・チャームは、日本国内では市場が縮小している赤ちゃん用おむつに代わって大人用おむつで市場を拡大しつつ、海外の新興国では赤ちゃん用おむつの市場を拡大している。
この場合の優位点は、おむつの原料が赤ちゃん用も大人用もそれほど変わらないことだ。つまり、赤ちゃん用の経営資源を大人用に振り替えることで国内でも市場を拡大し、海外では従来の商品を投入して市場拡大を図るやり方だ。これも効率のよい「タイムマシン経営」の1種である。
シニアビジネスは
「グローバル・ライフサイクル・ビジネス」になる
さらに、これを一般化すれば、従来子ども用に提供していた商品を大人用に切り替えることで大人用市場を拡大しつつ、海外の新興国では従来の子ども用商品を投入して市場拡大を図るビジネスモデルになる。そして、その新興国が高齢化したら、日本で練り上げた大人向け商品を、満を持して投入すればよい。
こうして見ると、シニアビジネスは、「時間的な垂直展開」と「地理的な水平展開」とによって、グローバル規模で顧客のライフサイクルにわたるビジネスになるのだ。このように考えると市場可能性は無限大に広がり、暗いイメージに陥りがちな高齢化に明るい希望を見出すことができる。
これから本格的にシニアシフトに取り組もうという企業は、ぜひ、こういう発想で事業を構築するべきだ。
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