無断欠勤が1週間続き、どこにいるかも分からない
翌週の月曜日になってもBは会社に来なかった。さすがに困ったA課長はC社長に、Bが1週間無断で会社を休んでいること、誰も彼と連絡が取れず欠勤理由が分からないことを話した。そして、
「B君の件、これからどうしましょうか?」
と意向を聞いた。C社長はムッとした顔で、
「会社を無断で休むとは、常識知らずもはなはだしい! そんな社員はクビだ、クビ!」と叫んだ。
「えっ? B君をクビにできるんですか?」
A課長が驚いて尋ねると、C社長は机の引き出しを開け、就業規則を取り出してあるページをめくった。そして、
「ほら。ここに『無断欠勤が連続7日以上に及んだときは懲戒解雇にする』と書いてあるだろう?」
と指さしながら、A課長に見せた。
「なるほど」
「だから、もし明日もBが会社に来ないときは、7日間連続で無断欠勤したことになるから、切りよく年末付けでクビにする。その時は、手続きを頼んだぞ」
翌日もBは会社に顔を見せなかった。どうせこのまま会社を辞めるつもりだろうと考えたA課長は、次の日C社長の指示通り、Bを年末でクビ扱いとするべく手続きに必要な書類を作成し、正月休みが明けたらすぐに関係官庁へ提出できるように手はずを整えた。そしてBの抜けた穴を埋めるために、急遽求人募集の広告を出すことにし、早速業者を呼んで打ち合わせを行った。
正月休み明け、Bが出社してきたが……
ところが、正月休みが終わると、
「あけましておめでとうございまーす!」
と言いながら、何事もなかったかのようにBが出勤してきたのだ。そして帰省土産だといって職場のメンバーにお菓子を配り、A課長には実家に帰省した際にスマホを自宅に忘れてきたため、応対ができなかったことをわびた。Bの姿を見た周りはざわめき、A課長は腰を抜かさんばかりに驚いた。
Bは周囲の反応にけげんそうな顔をしながら自席に着こうとしたが、あわててA課長が止めた。
「B君、待って。そこはもう君の席ではないんだよ」
「僕が休んでいる間に席替えでもしたんですか?」
「違う。君は12月下旬から連続7日間無断で会社を休んだから、就業規則のきまりでクビにしたんだよ」
「えーっ!!」