経済のグローバル化は、戦争を起こしにくくするはずだった。グローバル化が戦争をむしろ阻止しにくくすることをロシアの現在の行動が示しているとしたら、どうだろうか。少なくとも過去10年間は、経済面での全世界的な相互依存が紛争発生の可能性を低下させるというのが、国際情勢に関する一般的な考え方だった。すべての国々が経済的にかつてないほど強く結び付いていれば、大規模な紛争が起きた際にはすべての国が苦難に直面する。そのため、軽々しくその危険を冒す者はいない。経済的結び付きは平和の保証につながる、というわけだ。しかしロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナとの国境地帯に10万の兵力を集結させ侵略の脅しをかけることで、この方程式を根底から覆しつつあるのかもしれない。プーチン氏は、ウクライナに対する行動が、緊密度を増す世界経済において波及効果を持つことを知っている。主な要因は、欧州が依存しているロシアからの細いエネルギー供給ラインが脅かされることだ。このためプーチン氏は、相互依存が自身に有利に働くと計算しているのかもしれない。ウクライナ侵略は同氏にとって経済的代価を払うのをいとわないほど重要だが、西側諸国にとって侵略を防ぐことは、代価をいとわないほど重要ではない。
グローバル化の戦争抑止効果、逆手に取るロシア
プーチン氏は、西側はロシアのウクライナ侵攻を阻止するための経済的代償を支払いたくないと踏んでいるかもしれない
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