アフターマーケットへの恩恵も

 マクラーレンとテスラの、このようなユニークな関係により生み出された恩恵の1つが、アフターマーケットにおけるグレードアップの選択肢の拡大と言えるでしょう。マクラーレンの一部車種でも装備しているこのソフトクローズドアですが、「モデルX」にも同じくシュバリエ社製のバージョン違いが標準装備されています。これら2種類のパーツに互換性があることに気づいた一部のマクラーレンオーナーたちが「モデルX」用のパーツをマクラーレンに取り付け、ソフトクローズドアの改造を行うようになりました。

 以下の動画は、このアップグレードについて説明したわかりやすい例と言えるでしょう。あるマクラーレンのオーナーが、改造のために必要なテスラ用パーツの部品番号などを解説しています。そこでは、テスラとマクラーレンという毛色の異なるクルマの部品が共有可能であることが示され、結果的に両者のオーナーにとって小さくないメリットとなっているのです。

 別格的な存在とも言えるハイエンドの超高級車に、なぜ乗用車の一般的な部品が用いられているのか、不思議に思われる人もいるかもしれません。ですが、少量生産のメーカーにとって既存のパーツから互換性のあるものを利用することは、特に経済的観点から大きなメリットと言えます。販売されているクルマの各種部品はすでに大規模な研究開発やテストが行われた結果の製品であり、その流用がかなうのであれば、生産台数の小さな自動車メーカーにとっては新たなパーツ開発のための費用削減とリスク軽減にもつながるのです。