パナソニックやソニーなどの大型テレビのリモコンに「アクトビラ」の文字があることにお気づきだろうか。

 インターネットに接続でき、ネットショッピングをしたり、見たい番組や映画が見られる機能の運営会社、アクトビラに、パナソニックやソニーなど大手テレビメーカー5社が出資している(筆頭株主はパナソニック)。まだ知名度は低いが、今年は普及元年になるかもしれない。

 というのも、東宝、松竹、東映など大手映画会社5社が集まった「まるまる映画」が、見たいときに好きな映画を見るというビデオ・オン・デマンド(VOD)の配信に乗り出したからだ。配信は月5本、提供期間は6ヵ月だ。古い作品が中心だが、「石原裕次郎などの有名俳優や有名監督の作品をまとめて配信するなどの企画も進行中だ」(松竹)という。

 VODが利用できる映像配信サービス「アクトビラ ビデオ」は新型の大型テレビに標準搭載され、光ファイバーやケーブルテレビ(CATV)といったプロバイダへの契約が不要。リモコン1つで見たい番組を選べ、決済もクレジットカードか「エディ」などの電子マネーで、利便性が高い。

 気になる利用料は高画質のHDで1本当たり630円、DVDレベルのSDで420円と、レンタルビデオ店よりやや高めだ。

 もっとも、1本当たり105~420円で配信するCATVのジェイコムは、映画などの配信ビジネスで年間26億円の売り上げを達成している。アクトビラ ビデオの登録者(無料)は27万件といわれ、登録しただけのユーザーの掘り起こし、新規テレビ購入者を考えれば潜在市場は大きい。

 最近の不況を背景に、レジャーや外食を控えて、家庭での娯楽を楽しむ“巣ごもり消費”が伸びている。レンタルビデオ客の取り込みで、テレビでのVOD普及につなげることができるかどうか。企画力や価格設定がその決め手になりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)