世界経済全体で物価上昇圧力が高まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)は、「利上げ」とバランスシートの縮小による「流動性の吸収」を急ぐ考えに転じた。今後、米国を中心に金融緩和から金融正常化へとシフトすることによって金利が上昇し、世界的に金融市場が不安定化する恐れがある。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
金融市場のパラダイムシフトによる
株価下落を警戒し始めた投資家はまだ少ない
2022年、世界の金融市場でパラダイムシフトが起きる可能性が高まっている。コロナ禍の発生以降、米国などの中央銀行は感染再拡大による景気低迷を防ぐため、「超低金利」と「流動性供給」を強化した。
しかし、世界経済全体で卸売物価の上昇が鮮明となり、物価上昇圧力が高まっている。それによって米連邦準備制度理事会(FRB)が、「利上げ」とバランスシートの縮小による「流動性の吸収」を急ぐ考えに転じた。今後、米国を中心に金融緩和から金融正常化へとシフトすることによって金利が上昇し、世界的に金融市場が不安定化する恐れがある。
今後のシナリオの一つとして、3月以降にFRBが利上げを実施し、6月あるいは7月からはバランスシートの縮小が始まる可能性がある。それによって、米ナスダック100採用銘柄などのIT先端企業の株式や債券、不動産などの価格は下落する可能性が高い。
FRB以外にも、英イングランド銀行や韓国銀行などが利上げを急ぐ可能性が高い。金融市場のパラダイムシフトによる株価下落を警戒し始めた投資家はいるが、その数はまだ少ない。仮に、米国で4回の利上げとバランスシート縮小があるとすれば、世界的に株式市場の下落は現実味を帯びるだろう。