2021年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、FRB(米連邦準備制度理事会)が、テーパリング(債券購入による量的緩和縮小)の前倒しを決定した。FOMCメンバーによる政策金利見通しでは、利上げペースの加速が示された。インフレ圧力は強まりこそすれ弱まりそうにはなく、一段の抑制策に踏み切る公算もある。(みずほリサーチ&テクノロジーズ 調査部プリンシパル 小野 亮)
2021年12月のFOMCで22年の
早期の利上げに布石を打ったFRB
2021年12月15日に発表されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の声明は、ほぼパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が最近の議会証言で「地ならし」していた通りの内容となった。ポイントは大きく3つある。
第一に、インフレ率が一段と上振れ、インフレ圧力が広がりを見せ、持続している状況に鑑み、高インフレについて「一時的」(transitory)という文言が声明文から削除された。そのかわりに、需給不均衡と経済再開の物価への影響に関して、「一部セクターにおける大幅な物価上昇に影響」との文言が「物価水準の高まりに影響」と変更され、インフレ圧力は一部にとどまらず広がりを見せていることを示した。
第二に「雇用の強まりとインフレの高まり」を踏まえて、テーパリング(債券購入による量的緩和の縮小)を早め、22年3月には資産購入を終了することを決定した。テーパリングの前倒しは早期利上げの必要性に備えたものである。
そこでFOMCは、第三のポイントとして、早期利上げへの布石も打った。早期利上げへの布石は、フォワードガイダンスの達成状況に関するFOMCの評価の変更と、FOMC参加メンバーによるドットチャート(政策金利見通し)の変更から構成される。
フォワードガイダンスでは、物価面についてすでに利上げについての基準をクリアしていることをFOMCとして機関決定した。物価に関するフォワードガイダンスは「インフレ率が2%に到達すること」と「インフレ率がしばらくの間2%を緩やかに上回る軌道に乗ること」の2つであり、21年11月のFOMCの段階ではまだ、パウエル議長が個人的見解として「基準をすでにクリアしている」と述べるにとどまっていた。
物価基準の達成により、FOMCは利上げ開始に向けて「広範かつ包摂的な最大雇用が実現すること」という雇用面に関するフォワードガイダンスの基準達成を待つばかりとなったわけである。
ドットチャートは前回9月から激変した。そこから読み取れる2022年以降の利上げ回数はどうだったのか。