SNSが誕生した時期に思春期を迎え、SNSの隆盛とともに青春時代を過ごし、そして就職して大人になった、いわゆる「ゆとり世代」。彼らにとって、ネット上で誰かから常に見られている、常に評価されているということは「常識」である。それ故、この世代にとって、「承認欲求」というのは極めて厄介な大問題であるという。それは日本だけの現象ではない。海外でもやはり、フェイスブックやインスタグラムで飾った自分を表現することに明け暮れ、そのプレッシャーから病んでしまっている若者が増殖しているという。初の著書である『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)で承認欲求との8年に及ぶ闘いを描いた川代紗生さんもその一人だ。「承認欲求」とは果たして何なのか? 現代社会に蠢く新たな病について考察する。

右手薬指に指輪をしてしまう系女子Photo: Adobe Stock

左手薬指ではなく右手薬指だから問題なのだ!

 女友達の右手薬指に突然指輪がはめられたことに気がついた日ほど、女を動揺させる瞬間はあるだろうか。いや、ない。

 えー、のっけから反語調で失礼します。いやー、しかしね、この問題マジで根深いんですよ。というわけで、まずは女子の右手薬指リング問題について激論を交わしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 男性からすれば、いや、右手薬指じゃなくて左手薬指では? と思われるかもしれない。女同士で、お互いに結婚している・していないを確認し合う。結婚をしていない人は女友達の左手薬指に指輪があるという事実に焦るし、動揺する。嫉妬する。

 まあ一般論として、たしかにそれもあるだろう。左手薬指の指輪の存在が女子会におけるパワーバランスを大きく左右しているのは事実だ。

 しかし! それ以上に女子の心をかき乱すのは「左手薬指」ではなく「右手薬指」の指輪であると、私はここで強く主張させていただきたい。

 これまでの人生で何度その指輪の存在に左右されてきたことか。どれだけ苦しい思いをさせられ、そして、そのリングの周りにねっとりと絡みつく承認欲求と嫉妬に振り回されてきたことか!

 たった一つの小さなリングが、どれだけ衝撃的なのか。

 それほどに強い衝撃を与えるのはなぜか。

 そして、なぜ右手なのか。

 それを説明するために、私が初めてその指輪の存在に気がついたときのことからお話ししたいと思う。

 あれは、私が大学一年生の頃だった。まだ十八歳とかそこらだったと思う(若ッ!!)。入学したばかりでそれほど仲の良い友達もおらず、まんべんなく色々な子と仲良くしていた。その中には当然、私が苦手なタイプの子もいた。私はもともと根暗で、クラスの中心的人物みたいな、人気者タイプは極めて苦手である。インドア派で陰キャ、人前に出るのは大嫌いな人間だから、とにかく新しいコミュニティに馴染むまでに時間がかかる。けれども、せっかく入った大学でのボッチ生活に耐えられるほど強靭なメンタルを持っていたわけでもなかったので、仕方なく(というと失礼だが)気が合わない友達とつるんでいたのだ。

 その子はいかにも派手なタイプで、大学の中でも目立つグループにいた。話す内容といえば、「彼氏できた?」「どんなタイプが好き?」「処女卒業したのいつ?」などの恋愛ネタばかり。女子校出身の私には話せるような恋愛ネタはそれほどなかったが、嫌われるのも嫌なのでその子の話を適当に聞いていた。

 その日、いつも通り一緒にご飯を食べていると、ふと思い出したように彼女がこう言った。

「〇〇ちゃんって彼氏いるんだよね」

 同じコミュニティ内の子の噂話だった。〇〇ちゃんもイケイケ系のグループに属するようなタイプの子だ。まだこのクラスがはじまってからそんなに経っていないのに、もうそこまで把握済みなのか。さすがだわ、と内心少し引きながら私は適当に相槌を打っていた。

 が、そこで驚くべき事実が判明したのである。

「彼氏って、大学の人?」
「いや、知らない」
「え、なんで? 聞いたんじゃないの?」
「聞いてないよ」
「じゃあなんで彼氏いるってわかるの?」
「だって、ペアリングしてるじゃん」

 え、とそのとき、お箸を持つ手が止まった。

「ペアリング? してた?」
「してたよ。右手の薬指、いつもしてる」
「えっ、それペアリングってなんでわかるの?」
「右手の薬指だったら彼氏にもらったやつに決まってるじゃん。しかも絶対いっつもつけてるし。もし他の指にも色々ついてたらただのおしゃれかもしれないけど、薬指にしかついてなかったら間違いなくペアリングでしょ」

 そうか、そうか、なるほど。

 女子が身につける、右手薬指の指輪というのは、「彼氏がいますよ」という印なのか!

 カップルはペアリングってヤツを買うらしい、ということを知ってはいたものの、右手薬指に指輪をつけているというだけで「彼氏がいる」と完全に断定してしまうものなのか、と心底驚いた。

 実際に聞いてみると、たしかにその子には彼氏がいた。付き合って一年記念で指輪をもらったらしい。まあ、その子は結局その半年後に彼氏と別れてしまい、その直後に指輪を外していたんだけど。

 右手薬指の指輪は、「彼氏います」の証。

 はじめのうちは、その噂好きの子が大げさに言っているだけであって、みんながみんなそうとは限らないのだと思っていたが、それから歳を重ねるにつれて徐々に、その仕組みを嫌というほど思い知らされることになった。

 どうやら、彼女が言っていたことは本当らしい。

 それ以降も大学でサークルに入り、バイトをし、留学をし、就活をし、ゼミに入り、新しい人と出会うたびに、その「右手薬指に指輪をしている人は百発百中彼氏いる」理論が本当であると確信するようになった。

 それはもはや私たちの世代の中では常識で、男子すらもすぐに「あの子、彼氏と別れたんだね。指輪がなくなってた」などと噂していることもあった。

 いやいや、まじか。なんだそれ。そんなんで恋愛関係全部把握されちゃうの? めっちゃ怖いんですけど!