友達がある日、右手薬指に指輪をしてきたときの破壊力

　以来、私は新しく誰かと知り合うたびに、その人の右手をチェックする癖がついてしまった。とほほ。

　ただ、まあ、いいのだ。新しく知り合った人がペアリングをしていることなんて、たいした問題ではない。なぜならその人は最初から、「彼氏にペアリングをもらった人」として認識されるからである。

　問題は。

　問題はですよ。

　結構仲の良い女友達が、いつも通り「やっほー」などと言って手をふってきた、その右手に、ある日突然指輪がついていたときなのだ！

　そのときの寂しさと言ったら、なんと言えばいいのだろうか、置いて行かれた感というか、焦りというか。

　私の場合だけかもしれないが、ずっと「彼氏いない仲間」だった女友達に彼氏ができたときよりも、前から「彼氏がいる」と聞いていた友達がある日突然ペアリングをつけてきたときの方が、なんだかどうしようもない焦りと嫉妬を感じるのである。そしてそれは、場合によっては「左手薬指の指輪」の威力よりもずっと強力なものになってしまうのだ！ いや、これマジで！

　なぜなら、「仲の良かった友達が、ある日突然左手に婚約指輪をしてくる」というシチュエーションは、起きにくいからだ。

　だいたいにおいて、人は結婚をしたときや婚約をしたときには、友達や周囲の仲の良い人に報告をする。周りの人も「わー！ ついに彼と結婚か！ おめでとう！」などとお祝いをして、その流れで「結婚祝いにごはんいこう」などと会う約束を取り付ける。そしてそこで婚約指輪をつけているのを発見する。その場合、そもそも会う前から女友達の指にリングがついていることは予想できるので、「結婚したよ」という報告を受けた瞬間に吐きそうになることはあっても会ってからいきなり「ざわっ」と心が動揺することはないわけだ。動揺するとすればその指輪のメーカーがカルティエだのヴァンクリだのブルガリだの、有名な高級ブランドだったり、「デカッ！」と思わず声が出るほど大粒のダイヤだったりする場合だけだ。

　つまり、「そこそこ仲が良く、頻繁に連絡を取り合う女友達がある日突然、何の報告もなく左手薬指にリングをしてくる」ということ自体、その女友達がわざと驚かせようとしている場合以外は起こりにくいので、婚約指輪を目の当たりにする前にはたいてい、気持ちの整理がついていることが多いのだ。