「巨大なシステムのあっちこっちが崩れ落ちている」強い口調で大学問題の専門家はこう切り出した。田中眞紀子文科相が突如、3大学に「不認可」を突き付けた大学不認可問題。結局田中大臣が折れる形となったが、これをきっかけに改めて「大学のレベル低下」が取り沙汰される結果となった。そもそも国内大学の問題点は、新規大学の認可だけに止まらない。大学問題と向き合ってきた識者たちの抱える危機感は強い。いまだ議論が燻る大学の乱立問題について、背景に横たわる真の課題を改めて掘り下げてみたい。(取材・文/プレスラボ・小川たまか)

18歳人口は半減でも大学の数は1.5倍
「眞紀子大臣は正しい」と評価の声も

「関係者の皆様にご心配、ご迷惑をおかけしたことを、心からお詫びします」

 田中眞紀子文科相は記者会見で目を閉じ、頭を下げた。

 来春開学予定の札幌保健医療大、秋田公立美術大、岡崎女子大の3大学に対し、田中眞紀子文科相が突如「不認可」を突きつけたのは、11月初旬のこと。しかし3大学の強い反発を受け、結局、田中大臣が矛を収めることとなった。

 正論か、それとも暴論か――。先の騒動で目についたのは、これまで「独善的な言動が多い」と揶揄されることが多かった田中大臣に対して、評価が大きく割れたことだ。

 大学の乱立を指摘した田中大臣の行動に対して、一部から賛同の声も上がり、「大学はこれ以上増やすべきではない」という世論を表出させることとなった。それだけ、大学の乱立を疑問視していた人が多かったことの裏返しと言えよう。

 この問題、足もとではテレビや新聞で報道されることが少なくなったが、ネット上では今もなお、不特定多数のユーザーによる熱い議論が交わされている。また大学教授や識者が、公の場で深い危機感を露にし、様々な提言を行なうケースは、以前よりも増えている。そこで今回、大学の乱立問題について、背景に横たわる真の課題を改めて掘り下げてみたい。

 そもそも大学の乱立によって、どんな問題が生じるのか。それはもちろん、以前から言われる「4年制大学のレベル低下」である。