偶発的な衝突の
リスクが顕在化

 北朝鮮の核実験とICBM発射が行われた場合、米国はこれにいかに対応するのか。

 バイデン政権は国内政治へ影響を考慮すれば動きづらいだろう。せいぜい北朝鮮に対する制裁の強化を主張する以外ないのではないか。いずれにせよ、有効な制裁は期待できないだろう。とはいえ、北朝鮮が期待する対話や制裁の解除を行えば、米国内の非難を受けるだけである。

 また、文在寅政権は最後の「終戦宣言」というカードを失うことになり、動きが取れなくなるだろう。そして、今年3月の韓国大統領選挙で、新大統領に与党「共に民主党」の李在明氏が就任すれば、今と状況は変わらない可能性が強い。

 中国は、北京オリンピックの成功を材料に、習近平国家主席の長期政権確立、中国の国際的影響力の強化に力を傾ける。そのため、北朝鮮を対米カードとして利用しようと、安保理等での米国の指導力を妨害するだろう。

 北朝鮮は経済的困窮が深まる中、核開発、ICBM発射を続けても制裁解除など得られるものはなく、不満と焦燥感が高まっていくだろう。

 八方ふさがりとなった国際社会は、偶発的な衝突のリスクに直面する事態となるかもしれない。それは必ずしも核・ミサイルに絡んだものではなくとも、38度線付近や海洋における衝突などの可能性もある。日本は自らの防衛力をいかに強化していくか早急な検討が必要である。

米韓の核・ミサイル防衛計画は
北朝鮮の核・ミサイル開発に遅れている

 北朝鮮は2017年11月29日、ICBM級「火星15型」を試験発射。その後、核兵器3大要素の核物質・起爆装置・運搬体系のうち、最後の長距離ミサイル能力が完成したとして、政府声明で「国家核武力完成」を宣言した。

 さらに2020年には、まだ試験発射されていないが、軍事パレードで「火星17」を公開した。これは多弾頭搭載が可能で、最大射程1万3000~1万5000キロと推定されている。