“投資”に対する認識はどうか
日本と外国の差

 FIREも内実にはいくつか種類がある。「豪遊して暮らせる」「質素になら暮らせる」「生活は資産運用分で余裕だがあえて働く」などで、「頻度を減らした働きで得た収入と資産運用を合わせて生活していく」スタイルは特に“サイドFIRE”などと呼ばれる。
 
 だからひとくちにFIREといっても、その内情は人それぞれだが、資産運用は必ずベースとなっている。
 
 FIRE本国のアメリカは投資が盛んな国だが、さて日本で“投資”と聞くと、どうしてもきなくさい印象を持たれる向きが多いのではあるまいか。日本銀行がまとめた「家計の金融資産構成」データを見てみると、日本と外国の違いがよく見て取れて面白い。
 
 このデータによると、日本・米国・ユーロエリアの3者では、「保険・年金・定型保証」が共通して30%前後であるのに対して、「現金・預金」が米国13.3%、ユーロエリア34.3%、そして日本では54.3%となっている。では、その他のお金はどこに使われているかというと、株や投資信託、債務証券である。株だけを見てみると、日本10.0%、米国37.8%、ユーロエリア18.2%である。すなわちアメリカでは、いわゆる「お金に働いてもらう」が多く実践されているわけである。
 
 日本の「現金・預金」保有率は3者の中でずば抜けていたが、これは株式や投資信託などの“投資”的な資産運用に対する不信感の表れでもある。
 
 この日本人の価値観形成にはバブル崩壊が深く関わっているというのが私見である。バブルは、栄華なりし日々の様子とセットでその後やってきた大損害が語り継がれているから、「投資って致命的なリスクが付き物の非常に危険な試み」と考えられがちである。
 
 筆者は楽してお金を稼ぐために1年ほど本気で投資の勉強をしたことがあるが、「リスクのコントロールを顧みない投資は、“投資”的ではなくギャンブル的である」ということを学んだ(これに合わせて「楽してお金を稼ぐ道はない」ということも分かった)。
 
 だからFIREも「結局投資なんでしょう。怖い!」と最初は思われるであろうが、志してその道を勉強する人が増えれば「リスクをコントロールしてしかるべき運用を心がければ“投資”はただ怖いだけのものではない」という価値観に、わずかずつではあろうが徐々に上書きされていくかもしれない。