ランジェイ・グラティランジェイ・グラティ教授 (C)Kent Dayton

近年、パーパス(企業の存在目的)を重視した経営手法が高い関心を集めている。そんな中、ハーバードビジネススクールのランジェイ・グラティ教授はディープ・パーパス(=深層的なパーパス)に焦点を当てた著書を上梓した。深層的なパーパスとは何か、またどのように生まれるのか。マイクロソフトの事例を交えて解説してもらった。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

「表層的なパーパス」と
「深層的なパーパス」の違いとは

佐藤 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、「パーパス経営」(企業の存在目的を核とした経営手法)を実践する企業が増えてきています。ハーバードビジネススクールでもリーダーシップ、マーケティング、経営戦略など多くの授業でパーパスが教えられていると聞きました。なぜこれほど急速にパーパス経営が広まっているのでしょうか。

グラティ パンデミックを機に世界中の人々の間で自らの存在目的(パーパス)を問い直す動きが高まっているからだと思います。アメリカが「大量離職時代」を迎えているのは、その象徴とも言えます。私たちが自分の人生の目的について深く考えるのはやはり危機のときなのです。

 同じことが企業にも言えます。企業もまた、さまざまな危機や変化に直面する中で新たな指針を必要としています。「私たちの企業は何のために存在しているのか」という問いに対する答えは、その後の重要な指針になります。だからこそパーパスの価値が再認識されているのです。

佐藤 グラティ教授は最新刊の『ディープ・パーパス:優れた企業の核心』(Deep Purpose: The Heart and Soul of High-Performance Companies)で「ディープ・パーパス」という新たな概念を提唱しています。「ディープ・パーパス」は普通のパーパスとはどう違うのでしょうか。