7月23日、東京オリンピックが開幕する。世界的な新型コロナウイルス感染拡大を受けて1年延期されたのち、ほとんどの会場で無観客開催となることが決定した本大会。ハーバードビジネススクールで「リーダーシップと企業倫理」などの講座を教えるサンドラ・サッチャー教授は、この決定を「非常に悪い決断」だと指摘する。日本のリーダーはどう決断し、行動すべきだったのか。ハーバード大教授が緊急提言する。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
東京五輪・無観客開催の決定が
「非常に悪い決断」といえる理由
佐藤 今月23日から東京オリンピックが開幕します。1都3県をはじめとする主な会場では無観客で開催されることが決定しています。サッチャー教授はハーバードビジネススクールで長らく企業倫理の授業を教えていますが、もし東京オリンピックの事例を取り上げるとすると、5者協議(IOC<国際オリンピック委員会>/IPC<国際パラリンピック委員会>/東京都/日本政府/大会組織委員会)の決定をどのように分析しますか。
サッチャー まずパンデミックのような有事でのイベント開催を検討する会議では、全ての選択肢を考えることが必要です。5者協議で検討すべきは、次の四つの選択肢です。
(1)予定通りの観客数で開催する
(2)観客数に上限を設けて開催する
(3)再延期する
(4)中止する
次に一つ一つの選択肢について、「法律、経済、倫理」の三つの側面から分析していきます。法律を順守しているか、経済合理性はあるか、そして倫理にかなっているか。ハーバードビジネススクールの授業では、リーダーはこの三つの要素を全て満たす決断をするべきだと教えています。
佐藤 6月21日、5者は「(2)観客数に上限を設けて開催する」ことを選択しました。さらに7月8日には(2)の選択は変えずに、1都3県の会場を無観客とするなど観客数をさらに厳しく制限する決断をしました。これらの決断をどう評価しますか。