ハーバードビジネススクールのランジェイ・グラティ教授は、新刊の「ディープ・パーパス」でリクルートの事例を取り上げている。特に同社が手掛けるオンライン学習サービス「スタディサプリ」の事業に注目したという。その理由とは。また、「リクルート事件」の後、同社のパーパスはどう変わったのだろうか。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
>>第1回『ハーバード大教授が語る、パーパス経営を「上っ面で終わらせない」方法』を読む
ハーバード大教授が
「スタディサプリ」に注目した理由
佐藤 近著の「ディープ・パーパス」(Deep Purpose: The Heart and Soul of High-Performance Companies)では、リクルートホールディングス(以下、リクルート)の事例を紹介しています。リクルートのパーパスに着目した理由は何ですか。
グラティ 私が最初にリクルートに興味を持ったのは、「起業家精神」の観点からです。「なぜ、リクルートは創業から数十年もたつのに起業家精神を保てているのだろうか」「どのようにしたら、これほど多くの新規ビジネスを次々に生み出せるのだろうか」と関心を持ちました。
大企業になればなるほど、社内から起業家精神が失われていきます。起業家精神の喪失は、多くのアメリカの大企業が直面している課題ですから、リクルートの事例はMBAプログラムの授業で教えるのに格好の教材になると思いました。
パーパスの観点から興味を持ったのは、「スタディサプリ」の事例を知ったことがきっかけです。スタディサプリは中学講座、高校講座、大学受験講座などを提供するオンライン学習サービスで、受講者は学習塾や予備校に通うよりもずっと安い価格で質の高い教育を受けることができます。
最初にこのサービスを知ったとき疑問に思ったのは、「なぜリクルートはこのアイデアを事業化したのだろうか」という点です。というのも、価格があまりにも安く、利益を上げるのが難しそうだったからです。