米中対立や台湾問題の
カギを握る人物は?

 そうだ。しかし今、台湾問題を中心に米中対立が激化している。中国の習近平国家主席は台湾統一をめざしているが、台湾側は当然、反対だ。万が一、中国が台湾へ武力行使をしたら、アメリカは台湾を守るために中国と戦うことになる。もちろん、両国ともそのような事態にならないよう、慎重な駆け引きを重ねている。そこで重要な役割を果たすのが日本だ。

 バイデン米大統領は大統領就任後、すぐに菅義偉首相(当時)と会談した。これまでアメリカの大統領が就任すると、まずはイギリスやフランスなどの首脳と会談をしていた。ところがバイデン氏は、最初に日本の首脳と会談をした。このことが示すように、バイデン氏は日本に大きな期待を寄せている。

 そのため、日米地位協定を改定するには、今がこれまでにないチャンスだと思う。しかし同時にそれは、日本が主体的に安全保障の構築を行うべき段階にきているということでもある。

――日本はアメリカと中国の仲介役を担えるのでしょうか?

 僕は、米中対立、そして台湾問題のカギを握るのは林芳正外相ではないかと思う。

 習近平氏がもっとも日本で信頼しているのが自民党の二階俊博元幹事長だ。3年前、二階さんに「あなたも80歳なのだから、後継者を決めたほうがいい」と言った。誰が良いだろうかという話になり、林さんの名前が挙がった。その後、林さんと二階さんと何度か会うことになった。

 おもしろいのは、岸田文雄首相は、林さんが二階さんの後継者だと百も承知で、安倍さんの反対を押し切って外相に抜てきした。つまりこれは、台湾問題に積極的に取り組むという証拠であり、米中対立の渦に巻き込まれたままではなく、日本としても主体的に米中の仲を取りまとめようという、岸田政権の強い意思の表れでもある。

 1月7日に、日米で安全保障の強化策を話し合う場としては最高レベルに位置づけられる、日米安全保障協議委員会(通称、日米2+2)が、オンラインで開催された。

 日本側は、林芳正外相および岸信夫防衛相が、米国側は、アントニー・ブリンケン国務長官およびロイド・オースティン国防長官が出席。日米2+2は、日米の安全保障における重要な節目に行われるが、前回の2021年3月開催以来、わずか9カ月で再び開催している。

――それだけ米中対立、そして台湾問題に大きな動きが起ころうとしているということでしょうか。

 そうだろう。僕は一次情報を大切にする。直接、多くの政府関係者と会って情報を集める。それらの情報を紡ぐと、日本政府は近々、台湾問題に関して具体的な対策を示すのではないか。それをもとに、年内にも政府が実際にアクションを起こすことを期待している。