『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら
[質問]
趣味で小説みたいなものを書いていて、自分で読み直したのですが、助詞や句読点の書き方が違うせいか、他の人のネット小説や本屋にある小説のようなつっかえずに読める文や情景が想像しやすい文にできませんでした。
小説に限らず、自分で文を書く時にルールというかしばしば正しいとされている文するにはどうしたらよいのでしょうか。
好きな文章を「文節」「単語」に分解してみてください
[読書猿の回答]
書き言葉を操るには訓練が心要ですが、その柱は3つ、入力、分析、出力です。まず読まない人間は書けるようになりません。しかし、ただ読み流しても定着効率は高くありません。効率を高める鍵は分析(分解)であり、そのための工具が文法です。
まずは他人の書いた文章の一部を取り出し(文章を読んでいて「これはいい」と思ったのを使うとよいです)、一文を文節に、そして単語に分解し、その品詞を明示し、助詞や助動詞の機能を確定し、単語の間の関係を矢印で結ぶワークをやりましょう。
他人の文章で文章分析の経験を積むと、自分の文章に対してもできるようになります。
あらゆる技能がそうですが、まずゆっくりと意識的にできるようになった後、さらに訓練を重ねることで、意識せずに速度を上げてできるようになります。
文法的におかしな文章を書いてしまう状態、言い換えれば、意識しないと文法的に正しい文章を書けない状態では、せっかくの貴重な認知資源をそこに費やしてしまい、「うまく書く」ところまでなかなかいけません。
これは、書くことを楽しんだり、表現を磨いたり、よい言い回しを思いついたり、思い描いた情景を過不足なく伝える工夫を考えたり、全体の構成と細部の表現をマッチさせたりという、よい文章を書くことに回せる認知資源が減ってしまうからです。これでは、今うまく書くことが難しいだけでなく、将来に渡って、文章を書く技能の向上を妨げます。
地味な文章分解は、今のうちにやっておけば、一生モノです。『独学大全』やおちこぼれのチャーチルがノーベル賞までとった文才を磨いた教えの記事にもその効用を書いてあります。