2月9日に設立された「責任ある積極財政を推進する議員連盟」、その設立総会において行われた安倍晋三元首相および本田悦朗明治学院大学客員教授による講演は、前編でも記載した通り、同議員連盟の今後の活動の土台となるものである。以下、後編として同講演の概要を紹介するとともに、同議連の活動の今後について考えてみたい。(政策コンサルタント 室伏謙一)
政府の財政を均衡させると
企業や家計にしわ寄せ?
前回に引き続き、同議連の設立総会での講演内容をご紹介する。
マクロ経済は4つの部門で成り立っている。財政部門、企業部門、家計部門、海外部門で全体としてマクロ経済はバランスしている。貯蓄は投資に等しい。全ての貯蓄を合計すると全ての投資に常に等しい。これはよくISバランスと呼ばれる恒等式である。
家計は住宅ローンを除いてだいたい貯蓄超過、海外もだいたい日本の経常黒字が継続している。したがって、日本経済を左右するのは企業と財政ということになる。しかし、残念ながら、デフレになってから企業はずっと貯蓄超過だ。もっと投資してほしいが、内部留保を厚くしている。マクロ経済環境がそうさせているのだ。やはり、将来に対して不安があるので、貯蓄超過になるよう努力するようになってしまう。そうすると、マクロ経済がバランスせず、全体として貯蓄超過になってしまう。
この場合、残った部門、財政が投資超過にしないと、マクロ的に貯蓄=投資にならない。よって、マクロ経済をバランスさせようとすると、自然に財政は赤字になる。それで今のGDPが成り立っている。もし政府だけを無理やり均衡させようとすると、他の部門にものすごくしわ寄せが行く。企業収益も減る、貯蓄も減る。そうしないとISバランスは成立しない。そういうことが本当に国民を幸せにするのだろうか。
今頑張って政府が赤字を出せば、いずれ企業は将来見通しがよくなる。そして消費が増えてくれば、投資が増える。そうすれば、貯蓄バランスから転換して投資超過になる。これは普通の世界である。世界のどこでも、企業は銀行からお金を借りて、そのお金で投資をする。それでこそ企業だ。リスクを取るのが、アニマルスピリッツを持っているのが企業である。本来の姿に一刻も早く戻せば、財政の負担は軽くて済むはずだ。それを、将来の姿として念頭に置いておくべきである。
日本のデフォルトはあり得ない?
今こそ財政出動のチャンス
今こそ、財政出動をする一番いいチャンスである。IS曲線は貯蓄と投資が等しくなるようなGDPの組み合わせだ。これは右肩下がりになるが、これに対し、金融政策曲線(MP曲線)は、基本的に右肩上がりになる。ところが、10年物国債の金利がゼロなので、MP曲線は全くフラット。投資をするとIS曲線が右にシフトする。その分だけGDPは増えるが、増え方が減る。なぜなら、金利が上がるからだ。現在は、いくら投資をしても金利が上がらない。このメリットを最大に生かすために、このフラットなところで交わっているIS曲線を右にシフトさせれば、もろにGDPに効いてくる。