楽しい未来が描けない
「息苦しい思想」?
格差拡大などで新自由主義や行き過ぎたグローバリゼーションへの反省や気候変動問題の取り組みが世界のメインテーマになり、日本でも斎藤幸平・大阪市立大准教授の『人新世の「資本論」』が話題を呼び、英国のアーロン・バスターニの『ラグジュアリー・コミュニズム』など、新しいタイプの左派経済思想が相次いで登場している。
しかし、斎藤氏やトマ・ピケティ氏が個別に注目されることはあっても、彼らの議論をもとにして、資本主義の将来やオルタナティブをめぐる議論が全体に盛り上がっている様子はない。
少なくとも日本では左派政党や運動に取り入れられて、大きなうねりになりそうな雰囲気もない。
どうして、左派の思想があまり魅力的に見えなくなったのか。
最初に答えを言えば、現代の左派思想は、禁欲主義的な雰囲気をあまりに強く醸し出していて、特に若者にとっては、楽しい未来を描けない「息苦しい思想」になっているのではないか。