押しつけはしない
独自性と自主性を尊重

――教えるに際して、どこの国の制度を基準にしたのでしょうか。

 我々は必ずしも日本の内容を教えるということではなく、ASEANスタンダードを中心に教えるようにしました。従って、講師も日本からだけでなくて、マレーシアから、インドから呼んで来たり、マレーシアの公務員研修所のカリキュラムを参考にしたり、シンガポールの公務員研修所で教えている内容も参考にしました。

――彼らに教える際に、どのような点に気をつけていましたか。

 丸紅時代から気をつけてきたのは、こちらの意向や内容を押しつけないことです。その国の伝統や文化があるから、それを無視していろいろ教え込もうとしてもうまくいかない。従って、ASEANスタンダードだとか、グローバルスタンダードとか言いながらも、ミャンマー式のグローバルスタンダードを作っていけるように、彼らの自分たちの文化や伝統、やり方を重視するように取り組んでいました。

――具体的にミャンマーの良さで尊重しようとした点はどのような点ですか。

 それは逆に外部からは、なかなかわからない点なので、我々のほうから、ここがいいからこうしなさいとは言わないことにしています。ASEANに加盟するにはこういった準備が必要だし、それならどういうカリキュラムが考えられるというのは教えますが、そこから先は彼ら自身に考えさせるようにしました。

 もうひとつの私が気をつけてきたのは、公務員研修をやるのは中央政府だけでなく、地方の行政官も大事だということを再三強調していました。ご案内の通り、ミャンマーには少数民族に関する紛争が多くあります。地方に行けばいくほど、少数民族の問題が存在します。少数民族には少数民族なりのやり方があるので、中央政府にそれがそのまま受け入れられるかは別だけれども、なるべく彼らの意向を尊重することが大事なんだよと言い続けてきました。従って、地方の役人ほど、現地独自の習慣や問題点等に、しっかり対応するようにと言ってきました。

――そういった教えに対して、現地はどの程度前向きに取り組んだのですか。

 彼ら自身が昔から一番苦労してきたのは、ミャンマーの国として統一意識を作ることでした。そのために軍政がいろいろと施策を打っていました。従って当時の官僚たちは、どのように意識を統合していけばいいか、私たちに積極的に聞いてきました。

 そうした中で、地方政府は独自の言葉もあるし、中央政府が地方に押しつけてもうまくいかないと言ってきました。それが結果的には少数民族との和解などの大きな命題に間接的に繋がっていくと伝えると、彼らも真剣に聞いていましたよ。