戦術家プーチンは
ロシアを地獄に連れていく

 国のトップに「戦術家」がいるとロクなことがない。ナポレオンもヒトラーも、優秀な戦術家だったが、結局敗北した。

 プーチンは、間違いなくすぐれた「戦術家」だ。だが、「戦略家」ではない。

 彼は2014年、ほぼ無血でクリミアを奪ったし、今回も、ほぼ無血でドネツク、ルガンスクを奪った(プーチンは、両人民共和国を「併合しない」としているが、実質支配していることに変わりはない)。

 ロシアにとってはいずれも「戦術的大勝利」である。しかし、「戦略的勝利」とはいえない。

 2000年から2008年、すなわちプーチンの1期目と2期目、ロシアのGDPは年平均7%成長していた。当時は非常に勢いのある国だったのだ。

 しかし、2014年にクリミアを併合した後、経済は全く成長しなくなった。2014年から2020年までのGDP成長率は、0.38%にとどまっている。

 成長が止まった最大の理由は、欧米日の経済制裁だ。

 プーチンとロシア国民は、「クリミアを奪った罰」を受けている。

 それは、「貧困」という罰だ。

 ロシアの1人当たりGDPは2008年の1万2464ドル(約143万4000円)から、2020年には1万115ドル(約116万4000円)にまで減少している。

 また、CEIC DATAによると、ロシア人の平均月収は2021年11月時点で、767ドル(8万8205円)にすぎなかった。

 そして今回、プーチンは、同じ過ちを繰り返している。

 日米欧からさらに強い制裁が科され、ロシア経済はボロボロになるだろう。

「戦術家」プーチンは、ウクライナ国民を不幸にするだけでなく、ロシアを孤立させ、貧困に突き落とし、LOSE-LOSEの道をばく進する。

 1月末、「全ロシア将校協会」のイワショフ会長(退役上級大将)は、ウクライナ侵攻の結果について、公開書簡の中で「ロシアは間違いなく平和と国際安全保障を脅かす国のカテゴリーに分類され、最も厳しい制裁の対象となり、国際社会で孤立し、おそらく独立国家の地位を奪われるだろう」と書き、「プーチン大統領の辞任」を要求した。

 ロシアが「独立国家の地位を奪われる」とは思わない。

 しかし、国際社会で孤立し、最も厳しい制裁の対象になるのは、間違いない。

 プーチンは、ウクライナだけでなく、ロシアも破壊することになるだろう。