ウクライナ問題が「戦争」へ発展した場合、世界経済はどうなるのか。株価や通貨、債権は暴落する一方、エネルギーや鉱山資源、穀物の価格は上昇し、世界的な物価上昇圧力が一段と高まり、各国で企業の業績が悪化するだろう。戦争が回避されたとしても、各国の制裁により、供給制約が深刻化するはずだ。例えば半導体製造に用いられる「希ガス」の一つである、「ネオン」はロシアとウクライナでその多くが生産されている。ロシアが報復措置として希ガスの輸出を制限すれば、半導体不足に拍車がかかる。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
液化天然ガス(LNG)や原油など
資源の供給も絡む複雑さ
ウクライナ問題が緊迫している。ウクライナは、米英独仏など北大西洋条約機構(NATO)に加盟する国と、ロシアを中心とする独立国家共同体(CIS)に挟まれている。また、中央アジアでの影響力強化を目指す中国も、ウクライナに対して重要な関心を寄せている。そこに、液化天然ガス(LNG)や原油など資源の供給も絡み、ウクライナ情勢は非常に複雑だ。これからも神経質な展開が続くだろう。
世界の地政学の要衝であるウクライナは、現在、NATO加盟を目指している。ロシアはそれを脅威と考え、国境地帯に軍を集結させ、いつでもウクライナ国内に侵攻できる体制を敷いている。万が一の展開として、戦闘状態に発展する恐れはゼロではない。その一方で、「戦争は起きないだろう」と先行きを楽観、あるいは高をくくっている投資家は多いようだ。
過去、戦争の勃発によって世界の金融市場は暴落した。株式、通貨、債券の価値は吹き飛んだ。仮にウクライナで戦争が勃発すれば、世界の経済と金融市場には大きなマイナスの影響が及ぶことは避けられない。ウクライナ問題の緊迫化が、世界経済と金融市場に与える負の影響は過小評価できない。