最新機械導入のポイント、
ネタ探しのコツ
最新機械導入によるスクラップ・アンド・ビルドの基本は、過去よりも将来を見つめること。今目の前にある設備はすべて過去の産物、遺物です。
最新機械の投入を生産力向上と考える人がいますが、私の考えは違います。
もちろん受注が増えているのならそれも可ですが、基本は「同じ量を効率よく」、「同じ量をより早く」生産でき、効率化するために交換します。その後、結果として生まれた余力で生産量やラインを増やす、という考えのほうが健全です。
最新機械に入れ替えることで何を目指すのか、どこを目指して交換すればいいのか、具体的なポイントをあげましょう。
●単純作業を省人化・省エネ・省時間できる機械
同じ作業を1秒でも縮め、リズムよく、ポンポンと作るのが理想。
●従業員を安全に、楽にできる
安全だけでなく、毎日毎日、来る日も来る日も同じ作業を繰り返している従業員の姿を見ているのはきつい。どうすれば自動化、無人化に近づけるか。
●最新機械による改善を連鎖させる
こうした改善は、その次、またその次へと連鎖する。ひとつ実施すれば、また新たなポイントが見つかり、相乗効果を生み、気づいた時には工場全体、会社全体が効率高く回り始める。
私の場合が、人力でしていた「スケール」飛ばしを自動高圧ジェット水にする、人が突っ立って作業していた石炭投入をロボット化する、イギリスから最新式の見やすい温度計を取り寄せ温度共有の作業も効率化する……などといった具合です。
また、常にどこかの設備を更新、交換しているため、現場に業者が入っていない時期がなかったのもプラスに働きました。彼らからいいアイデアが出てくるからです。反対に、業者が来ていない時期が長いということは、スクラップ・アンド・ビルドの流れが途切れているサインです。
それでもなお、気づいていなかった問題がどんどん出て来ます。私は結果として100億円という対価で株式を売却しました。しかし、ついに退任の時まで、新機械導入のアイデアが尽きることはありませんでした。
経営は終わりがなく、改善もまた終わりはありません。それは重い責任であると同時に、経営者としての楽しみ、醍醐味でもあると思います。
(本原稿は、平美都江著『なぜ、おばちゃん社長は「無間改善」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』から一部抜粋・改変したものです)
平鍛造株式会社前代表取締役社長。現在は株式会社インプルーブメンツ代表取締役社長。1956年東京都生まれ。1977年日本女子大学理学科を、父の看病のため中退し、父が設立した平鍛造株式会社に入社。工場のオペレーターや営業職を経て、1986年専務取締役就任。宅地建物取引士、CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を次々と取得。父の天才的な技術で製造される超大型鍛造リングにより、他の追随を許さない企業として急成長。その後、リーマン・ショックによる景気悪化などにより受注量が激減。型破りな父による強引な客先交渉が裏目に出て、2009年に廃業する事態に。会社存続の危機に追い込まれる中、代表取締役社長に就任し営業を再開。一度離れた顧客の信頼回復に努めつつ、数々の経営の合理化を進め、数年で業績を回復させる。2018年大手上場会社へ株式を90%譲渡するが、2021年6月まで代表を務める。その後、株式会社インプルーブメンツを設立し、代表取締役に就任。著書に、『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか――父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)がある。