管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」で結果を出すのが仕事。それはまるで「合気道」のようなものです。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんな仕事ができる人だけが、リモート時代にも生き残る「課長2.0」へと進化できるのです。本連載では、ソフトバンクの元敏腕マネージャーとして知られる前田鎌利さんの最新刊『課長2.0』を抜粋しながら、これからの時代に管理職に求められる「思考法」「スタンス」「ノウハウ」をお伝えしていきます。

「決断力のあるリーダー」が会議で実行している“小さなルール”とは?写真はイメージです。Photo: Adobe Stock

チーム内の「提案書のレベル」を上げる

 私はソフトバンクのマネジャー時代に、担当部署の「定例会議」は30分で効率的に運用していました。その限られた時間で、メンバーと建設的な議論をしたうえで、スピーディに意思決定をすることで、チームが全力で走り続けられる状況を生み出していたのです。

 では、「30分会議」を実りあるものにするために大切なのは、重要な議題に絞り込むことです。

 定例会議にかける案件が多ければ、とても「30分」では会議を終えることができませんし、その分、議論の集中力も落ちて、意思決定の「質」も低下するでしょう。そこで、日常的に行われるメンバーとの一対一の打ち合わせや、少人数でのミーティングを活性化して、その場で、管理職の権限においてどんどん意思決定していくように心がけていました(詳しくはこちらの記事)。

 ただし、それだけでは足りません。

 もう一つ、定例会議を効率化する重要なポイントがあります。

 それは、メンバーが定例会議にかける提案のレベルを高めるということです。レベルの高い提案の条件は二つ。第一に、「簡にして要」を得た内容で、会議におけるプレゼンが3分以内に終わるように整理された提案であること。第二に、意思決定に必要な要素が過不足なく盛り込まれた提案であることです。

 このような提案であれば、プレゼンに要する時間も最短化できますし、プレゼン後に行われるディスカッションも的を射たものになるため、“回り道”をせずに意思決定することができます。その結果、定例会議を最大限に効率化することができるというわけです。

 ただし、メンバーに「提案のレベルを上げるように」と言うだけでは、そのような状況を生み出すことはできません。チーム内で提案のレベルを上げるために、管理職が適切な働きかけをする必要があるのです。

 どうすればよいか? 私は、パッと見た瞬間に提案内容を把握できるような提案書のサマリー・フォーマットをチーム内で共有するのがベストだと確信しています。

 なぜなら、プレゼンは提案書に沿って行うものだからです。いわば、提案書はプレゼンの“台本”。この“台本”がシンプルであれば、自然とプレゼンは短縮化されます。そして、提案の要点や論点がほかのメンバーにも即座に伝わることによって、その後のディスカッションも的を射たものになる。結果、意思決定に要する時間が最短化されるのです。

「決断力のあるリーダー」が会議で実行している“小さなルール”とは?前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年福井県生まれ。東京学芸大学で書道を専攻(現在は、書家として活動)。卒業後、携帯電話販売会社に就職。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。その間、営業現場、管理部門、省庁と折衝する渉外部門、経営企画部門など、さまざまなセクションでマネージャーとして経験を積む。2010年にソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認され、ソフトバンク子会社の社外取締役をはじめ、社内外の複数の事業のマネジメントを託される。それぞれのオフィスは別の場所にあるため、必然的にリモート・マネジメントを行わざるを得ない状況に立たされる。それまでの管理職としての経験を総動員して、リモート・マネジメントの技術を磨き上げ、さまざまな実績を残した。2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、プレゼンテーションクリエイターとして活躍するとともに、『社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『課長2.0』(ダイヤモンド社)などを刊行。年間200社を超える企業においてプレゼン・会議術・中間管理職向けの研修やコンサルティングを実施している。また、一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事、情報経営イノベーション専門職大学客員教授、サイバー大学客員講師なども務