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現場力を伸ばす先端IT活用の鉄則

フリーミアム・モデルについて、
我々が考えるべきこと

安間 裕 [アバナード株式会社 代表取締役]
【第16回】 2012年12月21日
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 先日、我々の金融部門のメンバーが、ワシントンDCで行われた「BAI Retail Delivery」というイベントに参加してきたのですが、その中での面白い事例と分析結果をご紹介します。

 事例としては、インドのICICIと言う金融機関が、Vodafoneと組んで発表した、Facebookと連携し、Facebookでの個人認証によって振込処理が行えるサービスが興味深いです。ユーザーが慣れ親しんでいるFacebookをインタフェースに、裏での処理は銀行でサービス提供しているバンキングシステムが動いています。

 「お金のやり取り」をキャッシュレスにする新たなビジネスモデルと言ってよいと思います。

 このビジネスモデルは、大きな意味では「損して得とれ」のひとつで、提供するサービスを拡充することによって、フリーミアム・サイトに大量に人を集め、本業へのリピート、アップ・セル、クロス・セルを増やすことを実現する、融合型のビジネスモデルだろうと思います。

 そのイベントで紹介されたデータによると、オンラインとモバイルでサービスを活用している人は、収益率が高く(29%も違う)、解約率も低い(63%も低いようです)と明白に出ています。サービスそのもので儲けるというよりも、「これは便利、この金融機関に預金しよう」といったように顧客の囲い込みに繋がるというわけです。

 また、同じイベントで出た話ですが、米国の銀行の利用方法は、2013年には、50%以上がネット・バンキングになるといわれています。給料日に、ATMに列を作る日本とは随分と違います。

 商品による差別化が困難な時代だからこそ、サービスによる差別化が顧客の囲い込みを生む。この考え方は、リアル店舗のサービス向上もそうですが、ネットの世界でも、全く同じことが言えると思います。

 ちなみに、Facobookにとっては、そのユーザがどういったサービスを利用しているかの分析材料として使えるため、Facebookが広告のターゲティングを行う際に利用する、効果的な広告を出すことができるなどのメリットがあります。今回の場合なら、金融系のアプリを使っているので、金融系の商品の広告を出す、などです。また、純粋にFacebookの広告価値が上がるという効果もあります。

 早晩、日本のネットユーザー数は、先進国と言われる欧米レベルになってくるのは確実です。

 そういった中、私は、企業として、一番大事なのは、「損して得とれ」型のネット・サービスを、広告戦略の対象として考える新しいメディアととらえるのみならず、真に戦う武器になる「損して得とれ」は何なのか、どういったネット・サービスに、人・もの・カネを、選択し集中するべきなのか、しっかりと考える必要があると思います。それは、上記の「Facebook振込機能」のように、サービスの質の向上を本業の収益向上につなげる、古くて新しい「損して得とれ」戦略なのだろうと思います。

 また次回以降、リアルタイムビジネスの「本題」に戻ってみたいと思います。お楽しみに。

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安間 裕
[アバナード株式会社 代表取締役]

団体系保険会社、外資系商社を経て、1998年にアクセンチュアに入社。その後外資系広告代理店を経て2001年に再度アクセンチュアに入社、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズの設立に携わり2002年8月に同社代表取締役社長に就任。2009年アクセンチュア執行役員アウトソーシング本部長、2010年執行役員ビジネスプロセス・アウトソーシング統括本部長を歴任。副社長としてフューチャーアーキテクトの経営に携わった後、2014年4月にアバナードに入社。1982年明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒。1959年生まれ。

現場力を伸ばす先端IT活用の鉄則

グローバル経済のなかで地盤沈下の進む日本。再びIT先進国として飛躍するためには、ITをビジネスの武器とする発想が必要だ。ビジネスは現場が肝心。現場の意思決定のスピードアップなど現場力向上に先端ITをどう生かしていけばよいか、IT業界のフロントランナーがわかりやすく解説する。

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