『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
三田紀房の受験マンガ『ドラゴン桜2』を題材に、現役東大生(文科二類)の土田淳真が教育と受験の今を読み解く連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」。第120回は、心の支えになるキーワードの重要性について考える。
新しいことを始める時に「思い浮かぶ言葉たち」
東京大学の入学試験に向けて、東大合格請負人の桜木建二は生徒たちに今後の方針を力説する。有事の際の必勝法として「3つのS(スピード、シンプル、システム)」の重要性を訴えた。
桜木の「3つのS」のように、自分の思いや方針をキーワードにまとめるのは意外と効果がある。これは受験に限った話ではない。普段の勉強でも、部活動でも、もっと抽象的な事柄に対してでも、自分の進み方をシンプルな言葉にまとめ、それに従って行動することは有意義だ。
もちろん著名人や歴史上の偉人の格言を引用してもいいのだけれども、座右の銘とは少し違う。自分の奥底から捻り出した言葉は、一見すると一般名詞を組み合わせた陳腐な言葉でも、自分にとって大切な意味を持つキーワードなのではないだろうか。
個人的な例で恐縮だが、2つの言葉を紹介させていただこう。「信念を持って挑む」「楽しさと正しさ」どちらもありふれた言葉だ。
だが、何か新しいことを始める時には常にこの言葉が頭に浮かぶ。その挑戦には信念が伴っているだろうか、その試みは正しさにとらわれているだけではないか、など自問自答をするきっかけになる。
そう考えると、例えば小学生の頃にあった「学級目標」なんていうのも馬鹿にはできない。当時は斜に構えていたが、今思えば意外と核心をついているような気がする。小学校6年生の時の学級目標は「努力、全力、協力」だった。無難と言われればその通りだし誰でも知っている言葉なのだが、誰もがこの3つを常にセットで考えられるとは限らない。
言葉が「軸」になる瞬間
『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
運動会のスローガンや文化祭のテーマなど、学校現場では一見するとどうでもいい「言葉」をたくさん作り出すことが求められる。これらは何もコピーライティングの力を育成しているわけではない。
重要なのは、それらの言葉が他人から押し付けられたのではなく、自分の中から出てきたということだ。自分で作り出したという事実そのものが、その言葉を過大評価させるようになる。私だったら「正しさ」や「楽しさ」という言葉には普段から過剰に反応してしまう。
抽象的だが思い入れのある言葉を常日頃から注視していると、何かを考えたり決断したりするときに、その言葉を通じて行動するようになる。それは全肯定というわけではなく、自分なりの評価軸の1つになるということだ。
あくまで評価軸の1つだから、時がたつにつれてその言葉の重要度が下がることもある。その時にはまた新しい言葉を紡ぎ出しているかもしれない。ただ、その言葉を大事にしていたという事実は忘れない方がいいだろう。後から振り返った時に、「この時この言葉、評価軸に基づいてこのような行動をとったんだ」と思えるからだ。
大学受験本番まで1カ月を切った受験生が多いことだろう。どうしようもなく不安を抱えている人は、桜木の「3つのS」のように何か1つキーワードを設定してみるのがいいかもしれない。肯定しても否定してもいいから思考の起点となる言葉は、折に触れて自分を助けてくれるものだ。
『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク
『ドラゴン桜2』(c)三田紀房/コルク







