研究グループの1人Michael D’Agostino氏が吸入型ワクチンでの接種を実演する様子写真:研究グループの1人Michael D’Agostino氏が吸入型ワクチンでの接種を実演する様子 Photo Credit: McMaster University

 長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との闘いに終止符を打つための切り札として、一部の専門家の間で吸入型ワクチンの開発に期待が寄せられている。吸入型ワクチンは、より少ない用量で、より効果的に人々を新型コロナウイルスから守ることができるため、世界のより多くの人々にワクチンを行き渡らせることができる可能性を秘めているのだという。そんな吸入型ワクチンの開発に関する報告を、マクマスター大学(カナダ)Michael G. DeGroote感染症研究所のMatthew Miller氏らが、「Cell」に2月8日発表した。

 報告された吸入型ワクチンは、ヒト、またはチンパンジー由来のアデノウイルスベクターを用いたもので、3種類の新型ウイルス抗原〔スパイクタンパク質のS1領域、全長ヌクレオカプシドタンパク質、RNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)〕を発現させる。Miller氏らは既にマウスを用いた研究で、この吸入型ワクチンの安全性と強力な免疫応答の誘導について確認していた。この結果に基づき、研究グループは同ワクチンの第1相臨床試験を開始。新型コロナウイルスのmRNAワクチンを2回接種した健康な成人を対象に、同吸入型ワクチンによる免疫増強効果について検討している。

 この吸入型ワクチンは、液状の薬剤を霧状に変える「ネブライザー」と呼ばれるデバイスを使って口から吸入して肺まで届ける。Miller氏は、「肺の免疫系に刺激を与えた場合に得られる免疫の質は、一般的な筋肉注射によるワクチン投与で刺激した場合に得られる応答とは本質的に異なる」と説明する。