所得税率30%の人はスイッチOTC薬を
年間購入5万円で1万1400円が還付される

(2)控除できる金額

 前述したように、セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例として導入されたもので、市販薬を購入した人の経済的負担に配慮した制度だ。

 医療費控除は、病気やケガをしてかかった医療費を一定のルールで、収入から差し引く所得控除によって、税金が軽減される制度である。セルフメディケーション税制も、仕組みは医療費控除と同じだ。薬局などで購入した市販薬の代金を収入から差し引くことで課税所得を引き下げ、その結果、節税できる。

 控除できるのは、昨年1年間に家族全員が購入したスイッチOTC薬の合計が1万2000円を超える部分の金額で、最高8万8000円までとなる。医療費控除は、1年間の医療費の合計が原則的に10万円を超えないと利用できないので、セルフメディケーション税制のほうがハードルは低いといえる。

 例えば、1年間に購入したスイッチOTC薬の合計が5万円なら、3万8000円を控除できるので、所得税率が10%の人なら3800円、20%の人なら7600円、30%の人なら1万1400円が還付金の目安だ。

 セルフメディケーション税制も、医療費控除と同様に、同一生計の家族なら、誰が申告してもいいので、収入が高く、所得税率の高い人が申告すると還付金が多くなる。

(3)健康づくりのための「取組」

「セルフメディケーション」という名称に見られるように、この制度は国民に健康づくりを促し、市販薬を利用することで、国の医療費を削減することを目的としているものだ。残念ながら、医療経済学の研究では、予防をすると医療費が安くなるというエビデンスはないのだが、この制度では、健康づくりや病気予防の努力をしていることを利用の要件にしている。

 そのため、セルフメディケーション税制の申告をするためは、「健康の保持増進および疾病の予防への取組として一定の取組」を行っていることを証明する必要がある。次ページでその内容を見ていこう。