「進むも地獄、引くも地獄」の苦境とは?

 ロシアが置かれた「進むも地獄、引くも地獄」の苦境とはどのようなものか。まずは「進むも地獄」だ。

 国連総会は、緊急特別会合を開催し「ロシア軍の即時・無条件の撤退」「核戦力の準備態勢強化への非難」などを盛り込んだ決議を、193カ国の構成国のうち141カ国の支持で採択した。2014年のクリミア併合時の決議への賛成は100カ国で、ロシアを批判する国の数は大幅に増加したということだ。

 国際社会は、ロシアの主張をまったく信用しなくなった。例えば、ウクライナ南東部のザポロジエ原発で、火災が発生し、「ロシア軍が砲撃した」と批判された。それに対し、ロシアは「“ネオナチ”や“テロリスト”が挑発行為をしようとしてきた」などと主張している。何が真実はわからないが、国際社会はロシアが原発を攻撃したと決めつけた。さまざまな情報が飛び交う中、世界はウクライナを信じる。情報戦で、ロシアは完全に敗北しているのだ。

 このまま、ロシア軍が地上戦の膠着した状況を打開するために、さらに地上軍を投入し、核兵器を使用したとする。ロシアの国際社会からの孤立は決定的になる「自殺行為」だろう。

 さらに、国際貿易における資金送金の標準的な手段となっているSWIFTからロシアを排除する制裁措置が決定された。次第に絶大な効果を発揮することになるだろう(第297回・p5)。