留学は、自分の成長スピードを加速させられた

安藤 本田さんも、海外に留学されたんですよね。一度、社会に出てから。

本田 はい。社会に出てからですね、それは。3年働いてお金を貯めて、アリゾナにあるサンダーバードというビジネススクールに入ったんです。でも、大学のときに行ってた方がよかったと今は思っていますね。

安藤 本田さんは社会人一年目からビジネスに従事されるわけですが、どうしてそのキャリアを途中下車して、アメリカに学びに行かれたんですか。

本田 ぶっちゃけて言うと、ハワイに住みたかったからです(笑)。大学4年のとき、ハワイに1カ月滞在して、ハワイに住みたいと思ったんです。でも、ハワイに住むためには、自分に足りないことがたくさんあった。英語がしゃべれなかったり、海外でビジネスをする能力がなかったり。これは埋めないといけない、と思っていたんですね。
 もう一つは社会人として働いていく中で、成長スピードを上げたいと思いました。若いうちに、もっといろんなことができるんじゃないかと。

 最初に入った会社は幸い、いろんなことを任せてくれる会社だったので、良かったんですけどね。ただ、僕がちょうど社会人一年目くらいのときにグロービスという学校ができたんです。

安藤 海外のMBAを日本にいながらにして取得できるという。

本田 そうです。そのときはマーケティングやマネジメントを授業で学ぶスタイルでした。今はもっと発展していますけど。
 そのとき、僕はたまたまマーケティングの授業をとったんです。それまで、自分で苦労して、こういうやり方をやったらうまくいくな、という方法論を経験から導き出していました。ところが、マーケティング理論を、ある程度、体系立ったものとして学んでわかったわけです。これを最初から知っていれば、一年苦労して無駄にしなくても良かったかもしれない、と。

 もちろん、そのまま仕事に使えるわけではないんですが、理解していれば、もっと成長スピードや、仕事ができるスピードを短縮できると思ったんです。だから僕は、アメリカのビジネススクールへの留学はキャリアの途中下車だとは思わなかった。それはむしろ、近道だと思いました。2年間、投資することが、何年分にもなって返ってくると思ったんです。

キム 大学の授業に出るか、出ないか、という話がさっきありましたが、これともつながりますね。本田さんの話だと、実践をすることによって、自分が感覚として挑戦をして、その中から独自の視点ややり方を作り上げるというのは、やっぱりすばらしいことだと思うんです。
 一方で、グロービスのマーケティングのように、すでに理論化され、体系化されたものも社会にはすでにあるので、そういうものを学ぶことによって、実践にもフィードバックができる。それもまた本質だと思うんです。

 つまり、大学の授業ばかり出ているのも問題だし、まったく出ないのも問題、ということですね。実践の伴わない理論は空虚で、理論の伴わない実践は非効率なわけです。
 つまりは、実践と理論というものを、両方、自分の中でバランスを取らせた形で相互の補完関係、シナジェティックな相乗関係を作り上げることができたら、それは理想的だということです。

(次回は4月1日更新予定です。)

「対談 媚びない人生」バックナンバー

第1回 媚びない人生とは、本当の幸福とは何か 『媚びない人生』刊行記念特別対談 【本田直之×ジョン・キム】(前編)

第2回 大人たちが目指してきた幸福の形では、もう幸福になれないと若者たちは気づいている【本田直之×ジョン・キム】(後編)

第3回 日本人には自分への信頼が足りない。もっと自分を信じていい。【出井伸之×ジョン・キム】(前編)

第4回 世界を知って、日本をみれば「こんなにチャンスに満ちあふれた国はない」と気づくはずだ。【出井伸之×ジョン・キム】(後編)

第5回 苦難とは、神様からの贈り物だ、と思えるかどうか【(『超訳 ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(前編)

第6回 打算や思惑のない言葉こそ、伝わる【(『超訳ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(後編)

第7回 いつが幸せの頂点か。それは死ぬまで見えない【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(前編)

第8回 国籍という枠組みの、外で生きていきたい【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(後編)

第9回 「挑戦しない脳」の典型例は、偏差値入試。優秀さとは何か、を日本人は勘違いしている【茂木健一郎×ジョン・キム】(前編)

第10回 早急に白黒つけたがる人は幼稚であると気づけ【茂木健一郎×ジョン・キム】(後編)

第11回 やりたいことがたまたま会社だった。だから、自然体で起業ができた。【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(前編)

第12回 不安は、将来に対する可能性の表れである。【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(後編)


 

 

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