従業員と経営者、双方の心理的安全性を担保する方法

心理的安全性の高い組織とは?「うちの会社は変わらない」を変える組織文化のつくり方中村朱美(なかむら・あけみ)
株式会社minitts代表取締役(佰食屋創業者)
1984年、京都府亀岡市生まれ。専門学校の職員として勤務後、2012年9月に飲食事業や不動産事業を行う「株式会社minitts」を設立。1日100食限定をコンセプトに、美味しいものを手軽な値段で食べられるお店「佰食屋」を行列のできる人気店へ成長させる。「1日100食限定」というお客さまにも従業員にもそして環境にも優しい経営の実現により、Forbes JAPANウーマンアワード2018新規ビジネス賞、日経WOMANウーマンオブザイヤー2019大賞等数々の賞を受賞。この不安定な世の中を生き残っていくために考え抜いた経営手法や「佰食屋」の運営に込めた「想い」や「優しさ」が人々の共感を呼んでいる。

塩瀬:今度はパネリスト同士で質問を回していきたいと思います。まず石井さんから中村さんへ、お願いします。

石井:中村さんにお聞きしたいのは、「売上を減らそう」ってすごくいいコンセプトだと思う一方で、売上が減ることによる不安にはどう対処していますか? やはり売上が上がって右肩上がりで成長していくと、特に経営者としては安心できるわけですよね。たとえば、コロナ禍のような状況に陥ったとき、上司によっては「もう危機的な状況だから、みんながんばってくれ!」と言いそうになる。そのような不安なときにどのように社員に対応しているのか、生の話を聞かせていただきたいです。

中村:まさに「売上を減らそう」というタイトルから、利益とか売上をすべて諦めて、働き方だけに注力をしている会社だと思われがちなんですけれども、実際は違うんです。私たちは売上の上限の「天」を決めることによって、その中でコスト削減をし、生産性を上げ、実は利益最大化を目指している企業なんです。

 この売上の「天」を決めることがポイントで、右肩上がりの利益を求めるがゆえに、たとえば毎年のように設備投資をしたり、雇用を増やしたりと、どんどん拡大をしていく。だけど、その「天」、つまり上限がいつやってくるかということにはなかなか気づけないんですよね。

 いわゆる大手飲食チェーン店であれば、だいたい600店舗というのが「天」だと言われています。たとえばとある居酒屋チェーン店ではチャレンジ企画として1000店舗を目指していましたが、670店舗ぐらいで留まり、現在では614店舗ほどまで減らしています。上を目指したけど結局閉めるとなると、どんどん赤字が出てしまう。売上を求めたのに赤字になってしまっては本末転倒です。

 なので私たちは絶対にクリアできる、何年たっても何の災害があっても絶対クリアできる上限を正確に設定することによって、そこでいかにコストを削減し、安定した人数で運営できるかということだけに注力をしています。

 がんばらなくても100食の集客ができる。そのレベルで運営をすることで、従業員は毎日完売をするという安心感を得ながら、私たちも売上が下がらないという安心の両方を得ているんです。