
争点単純化で有権者の選択幅狭く
“極端な政策”の主張が悪目立ち
7月20日の投開票が近づく参議院選挙では、自民、公明の与党が現金給付、野党が「食料品消費税ゼロ」や「消費税率5%」などの消費税減税という二つの物価対策が火花を散らしながらのアピール合戦だ。
だが本当に支援が必要な人に効果的な支援となるのかは怪しい。財源についても税収の上振れ分や基金などの取り崩しといった一時的なものが目立つ。
昨年の衆院選では、国民民主党が「手取りを増やす」というキャッチフレーズを掲げて議席を大幅に増やした。具体的な所得減税の制度設計が示されないままだったが、手取りが増えることに反対する有権者は少ない。今回の参院選はこの総花的に利益をばらまく流れに与野党が一斉に飛びついた感じだ。
メディアや政界では、「減税ポピュリズム」「ポピュリズム政党」といったやゆや批判も出ている。私はこのフレーズを見かけるたびに違和感に襲われるが、それでも政策論議の危うさを感じないわけにはいかない。
争点が「減税か、給付か」、当面当座の所得の増減に単純化された結果、かえって有権者の選択の幅が狭くなることだ。
賃金が上がらないという問題や財政や社会保障による支え合いの在り方などの本質的課題の議論が脇に追いやられるだけでなく、目玉政策が類似するなかで、その他の領域で極端な政策を訴える人たちが悪目立ちし、民意がそちらに吸い寄せられる危険性が高まることが懸念される。