小宮山・早稲田の優勝をかけた早慶戦、「筋書きのないドラマ」の行方は2020年秋季リーグで早慶戦後のインタビューに応じる小宮山監督 撮影:須藤靖貴

六大学野球、2020年秋リーグ。小宮山・早稲田は2位で早慶2連戦を迎えた。対する慶応は1位。この2試合で優勝が決まる。小宮山監督の2年にわたるチームビルディングは実を結ぶのか。(作家 須藤靖貴)

ここまで早慶いずれも無敗
優勝を決める決戦へ

「野球は筋書きのないドラマである」

「魔術師」の異名を持つ名将・三原脩の至言を、秋の空に思い浮かべてしまう。三原は早慶戦でも活躍した早稲田OBである。

 2020年秋の早慶戦2回戦の攻防。それを脚本家がそっくり書いたのなら、「こんな展開はあり得ない」とボツにされるかもしれない。

 早慶両雄が無敗で決戦に臨む。コロナ禍での変則開催のポイント制で、首位の慶応7ポイント、2位の早稲田が6.5ポイント。1回戦で慶応が勝てば優勝。引き分けか早稲田勝ちならば、賜杯の行方は最終の2回戦へ。優勝決定戦へもつれこむ可能性はないものの、60年前の「早慶六連戦」をほうふつとさせる(本連載『小宮山・早稲田の六大学野球初陣、監督の「我慢」は実を結ぶか』参照)。

「お互い無敗のまま、早慶戦で優勝をかけて戦うというのは、これ以上ない幸せ」

 立教戦後の記者会見で小宮山監督はそう語った。このとき、かつての早慶6連戦について触れている。 

「春からコロナに泣かされ続けてきましたけど、最後の最後にそのおかげで両校ナインは幸せなことを経験できる」

 そういう試合を目の当たりにできるわれわれも幸せなのである。

早慶1回戦は早稲田勝利、
2回戦で勝ったほうが優勝

 11月7日の1回戦は3‐1で早稲田勝利。先発・早川隆久が15奪三振の力投を見せた。早川は直前のドラフト会議で楽天に1位指名されている。慶応の先発・木澤尚文もヤクルトに1位指名。この試合は両エースが踏ん張り、1‐1の均衡で迎えた7回裏の早稲田の攻撃。1アウト一塁で8番蛭間拓哉が打席に立った。