白人至上主義などの
極右過激主義者が集まるウクライナ

 近年、ウクライナは白人至上主義など極右過激主義者が集まる聖域だった。

 テロ研究の中では有名な米国の調査会社Soufan Groupが過去に公表した統計によると、2014年のクリミア危機以降、2019年6月までに外国人戦闘員(Foreign Fighter)として戦闘や軍事訓練のためウクライナにやって来た外国人は、世界55カ国余りから1万7000人を超えた。

 国別で最も多いのはロシアで1万5000人と大半を占める。その他、ベラルーシが800人、ドイツが165人、ジョージアが150人、セルビアが106人、フランスが65人、イタリアが55人など欧州各国からも多くの参加者が見られる。

 また、欧州を超え米国から35人、カナダから14人、オーストラリアから9人、ニュージーランドから1人、ブラジルから4人、チリから3人など他地域からも集まったという。

 ロシアの1万5000人は親ロシア側であったが、他の国々の戦闘員はウクライナ側に加わる者、親ロシア側に加わる者双方がいたとみられる。

 Soufan Groupは、イスラム過激派「イスラム国」がシリアとイラクで一時期広大な領域を支配した時に数万人が「イスラム国」の外国人戦闘員として流れ込んだように、SNSやインターネットを通じて各国の極右過激派、白人至上主義者たちがつながり、結果としてウクライナに世界中から同調者たちが集まり、国際的なネットワークができたと指摘している。

 ちなみに、2014年のクリミア危機以降、ウクライナには「アゾフ大隊(Azov Battalion)」と呼ばれる極右組織が勢力を拡大し、同組織の軍事訓練に参加するため、米国や英国、イタリアやドイツ、スウェーデンやノルウェー、ブラジルなどから支持者たちが集結したが、それは上述の外国人戦闘員の数にも表れている。

 近年、国境を越えた極右勢力の動向においては、ウクライナのアゾフ大隊をはじめ、米国のアトムワッフェン・ディビジョン(Atomwaffen Division)、ライズ・アバブ・ムーブメント(Rise Above Movement)、ザ・ベース(The Base)、英国のナショナル・アクション(National Action)、ロシアのロシアン・インペリアル・ムーブメント(Russian Imperial Movement)、北欧のノルディック・レジスタンス・ムーブメント(Nordic Resistance Movement)などが代表的な白人至上主義的な極右勢力に挙げられる。

 また、アゾフ大隊がアトムワッフェン・ディビジョンやライズ・アバブ・ムーブメントのメンバーを軍事訓練のために受け入れたり、ロシアン・インペリアル・ムーブメントが開催する軍事訓練に参加したノルディック・レジスタンス・ムーブメントのメンバーがスウェーデン国内で移民・難民施設を襲撃したテロも報告されるなど、こういった極右組織は相互の交流を深め、緩やかなネットワークを形成している。