原発・競争激化・再エネ…問題山積の電力会社が“追い込まれる前”にすべきことPhoto:PIXTA

東京電力ホールディングス、関西電力など地域電力会社の2021年度の業績は厳しい状況にある。ウクライナ情勢を受けた燃料価格の高騰も懸念材料だ。また、電力会社の抱える課題はこれにとどまらない。原発、小売り自由化による競争激化、再エネの拡大――厳しさを増す環境で、かじをどう切っていくべきなのか。電力会社の抱える課題と、その解決策を考察したい。(大和証券アナリスト 西川周作)

燃料価格高騰が
電力会社に与える影響は?

 地域電力会社の2021年度業績は総じて厳しい状況にある。1月に公表された21年度第3四半期累計の経常損益は、地域電力9社全てが前年同期より悪化し、中部、中国、北陸、四国の4社は赤字となった。
※本稿の「地域電力会社」とは、電力小売り全面自由化の前に「一般電気事業者」と呼ばれていた10社のうち沖縄電力を除く9社を指す

 また21年度通期の会社計画についても、関西と北海道を除く7社が従来計画を下方修正しており、東京、中部、中国、東北、四国の5社は経常損失の見通しとしている。

 21年度を会社ごとに見ると、関西と九州の業績が相対的に堅調に推移している(図表1)。同2社では原子力発電所の稼働が貢献したことが挙げられよう。

各社業績(図表1)各社決算資料を基に筆者作成
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 石炭やLNG(液化天然ガス)などの火力発電に利用する燃料の価格上昇が業績に悪影響を与えていることから、その影響を受けない原子力による発電量の比率が高いことがプラスに働いている。関西は高浜3・4号機と大飯3・4号機と美浜3号機が、九州は玄海3・4号機と川内1・2号機が、21年度には稼働していた。四国も伊方3号機が21年12月に原子炉を起動したことから、22年1~3月期以降は損益が好転に向かうと見込まれる。他方、それ以外の地域電力会社の原発は21年度には稼働していない。

 ウクライナ情勢を受けて燃料価格は上昇が続いており、22年度以降も業績に悪影響を与える可能性に留意したい。ただし、価格上昇が止まれば、高値が継続する場合でも、地域電力会社の業績は改善に向かうだろう。