1月7日の福岡の様子今冬の猛烈な寒波で、電力需要が急増。燃料不足も加わり、電力需給がひっ迫している  Photo:JIJI

猛烈な寒波の影響で電力需要が急増し、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格が、歴史的な高値で推移している。JEPXから電力を仕入れる電力会社は、超逆ざやが続いてキャッシュの流出が止まらず、瀕死(ひんし)の状態に追い込まれている。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

スポット価格爆騰でキャッシュ溶かす
新電力が“緊急事態宣言”

 新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて菅義偉首相が「静かな年末年始」を呼びかけたが、電力業界は年末年始、上を下への大騒ぎであった。そして今も騒ぎは収まっていない。

 電力業界の中でも、2016年4月に始まった電力小売り全面自由化に参入した「新電力」は、瀕死の状態に追いやられている。顧客に販売する電力を仕入れる日本卸電力取引所(JEPX)のスポット価格が“爆騰”し、新電力は完全な逆ざやによるキャッシュ流出が止まらないのだ。

 JEPXによれば、20年12月26日からの平均スポット価格(24時間)は下図の通り、前年同期を上回る価格で推移し、21年1月11日のスポット価格(同)は史上初めて100円を突破して、1月13日は一気に154.57円まで跳ね上がった。この期間の平均スポット価格(同)は、前年同期比で8倍を超えている。

 つまり、JEPXから電力を仕入れた場合、電力の仕入れコストが前年度に比べて8倍になったということだ。ある中堅新電力幹部は「キャッシュが一日で数千万円も溶けていく。もう持たない。政府よりこっちが緊急事態宣言を出したいくらい」と悲鳴を上げた。

 昨年末からのJEPXのスポット価格高騰の要因について、電力業界関係者の間で一般的に言われているのは、今シーズンの厳しい寒さにより電力需要が急増し、電力供給が追いつかなくなっていることだ。

 特に電力を供給するための燃料である液化天然ガス(LNG)の在庫が想定を上回るペースで減少し、大手電力会社はLNG火力発電所の出力を絞った。これにより、電力需給がひっ迫し、JEPXのスポット価格の高騰を招いたのだ。

 ところが、である。別の電力業界関係者は「スポット価格の高騰を招いた真犯人は別にいる」というのだ。では真犯人は、いったい誰なのか。