ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長がロシア事業を継続すると明言して批判が殺到。3日で方針を転換してロシア事業の一時停止を決めた。SNSなどではこのドタバタ劇が嘲笑の対象にもなっているようだ。しかし今回は、「日本人は本当にユニクロを笑えるのか」という問題提起をしたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)
ユニクロのロシア事業が
継続から一転、営業一時停止に
ロシアによるウクライナ侵攻が、思いがけずユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長に飛び火した。「暴挙に及んだロシアでの商売を継続するなどあり得ない」という糾弾だ。
2022年2月24日、ウクライナにロシアが侵攻。「侵略だ」「戦争だ」と批判のボルテージが日に日に高まる中、柳井氏は3月7日付の日本経済新聞で「衣服は生活の必需品。ロシアの人々も同様に生活する権利がある」として撤退せずに営業を続けると明言した。
するとSNSを中心に「柳井批判」に火が付いた。一部の消費者は不買運動を宣言したり、「二度とユニクロやGUの服は着ません」とごみ袋に衣料品を入れた写真をアップするなどの抗議に及んだりした。
その後、ファーストリテイリングは態度を一変。わずか3日後の3月10日に「現在の紛争を取り巻く状況の変化や営業を継続する上でのさまざまな困難から、事業を一時停止する判断にいたった」と発表し、ロシア国内にある全50店舗の営業一時停止を表明した。
だが「遅すぎる」「何が『独立自尊の商人(※)』だ、単なる銭ゲバじゃないか」「ユニクロにも経済制裁を」などの反応が多数あり、批判は今も収まったとは言い難い。
しかし今回は、そうした多数派と思われる批判の声に対して、「私たちはユニクロを批判し、柳井氏の右往左往を笑える状況にあるのか」について問題提起し、真剣に考えてみたい。