300回の練習が「自分らしさ」になった

――いっぽうで、「自分らしさがわからない」という話もよく聞きます。

伊藤 やっぱりアウトプットして、チャレンジするしかないです。「自分らしさ」がないと続かないので。いま自分がやっていることは、逆に言うと「自分らしいから続いている」ことです。続かないことは「自分らしくない」のかもしれませんね。

平尾 私は、「超絶プレゼンが上手い」という伊藤さんの第一印象が強すぎて、まさにあれが「伊藤さんらしさ」だと思うんですけど、あのプレゼン力はどうやって身につけられたんですか?

伊藤 ソフトバンクアカデミアの最初のプレゼンって5分じゃないですか。僕は300回くらい練習したんですよ。その経験ですよね。

平尾 誰かに教わったとかじゃないんですね。

伊藤 独学ですね。誰かのトレーニングを受けたことはないです。自分で話して、録音して、聞いて、練習しての繰り返しです。

 その経験しかないです。多少の練習だと「緊張して本番で飛ぶ」のが怖いと思うんですけど、300回練習するとそれも無くなります。勝手にべらべら喋るんですよね。

 もう「これが極地だ」って思ったんですよ。

 とにかく練習するだけ。スティーブ・ジョブズのプレゼンをそのままコピーしたり、サイモンシネックのプレゼンをコピーしたり。

――練習している時はどんな気分なんですか? 楽しいのか? 嫌々やっているのか。

伊藤 300回練習したときは、「いや、孫さんの前でプレゼンするんだぞ…!」っていう気持ちで、良い緊張感、プレッシャーがありました。「孫さんの時間5分もらっちゃうのはヤバいな。やんなきゃ!」という感覚で、つらくはなかったですね。

 僕は人とちょっと違う鍛え方もしています。たとえば、こうやって話してるじゃないですか? その後、平尾丈さんの話し方を真似するんですよ。そうやって「いいところ」を取り入れるんです。サイモンシネックの真似しながら「間」を盗んだりとか。

 いろんな人のプレゼンだけじゃなく、ロックスターのMCとかも全部真似してます。

 最初の着眼点として、面白いと思えるかどうかは大切ですよね。起業家精神にも必要だと思います。

「自分らしさ」が分からない人がやるべき、「強みと弱み」の活かし方とは伊藤羊一(いとう・よういち)
Zアカデミア学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長
Zホールディングス株式会社 Zアカデミア学長/ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト Yahoo!アカデミア学長/武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長/株式会社ウェイウェイ 代表取締役/グロービス経営大学院 客員教授 東京大学経済学部卒、1990年日本興業銀行入行、企業金融、債券流動化、企業再生支援などに従事。2003年プラスに転じ、ジョインテックスカンパニーにてロジスティクス再編、マーケティング、事業再編・再生などを担当後、執行役員マーケティング本部長、ヴァイスプレジデントを歴任、経営と新規事業開発に携わる。2015年4月ヤフーに転じ、現在Zアカデミア学長、Yahoo!アカデミア学長としてZホールディングス、ヤフーの次世代リーダー開発を行う。またウェイウェイ代表、グロービス経営大学院客員教授としてリーダー開発を行う。若い世代のアントレプレナーシップ醸成のために2021年4月より武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)学部を開設、学部長に就任。代表作『1分で話せ』は56万部を超えるベストセラーに。その他『0秒で動け』『1行書くだけ日記』『ブレイクセルフ』『FREE,FLAT,FUN』など。