いま、注目を集める研究会がある。わずか2年で約1000人規模へ拡大し、東大新入生の20人に1人が所属する超人気研究会に成長した、「東大金融研究会」だ。創設者は外資系ヘッジファンドに20年在籍し、超一流の投資家として活躍してきた伊藤潤一氏。東大金融研究会ではお金の不安から自由になり、真の安定を得るために「自分の頭で考える」ことを重視している。世の中に溢れる情報や他人の声に振り回されず何が正しいのかを自分で判断し、物事を本質的に理解し、論理的に思考を展開することで、自立した幸せな人生を歩むことができるからだ。本連載では、東大金融研究会の教えを1冊に凝縮した初の書籍『東大金融研究会のお金超講義』から抜粋。頭のいい人だけが知っている「お金の教養と人生戦略」を紹介する。

投資の「優良銘柄」と「優良企業」の違いとは?【投資のプロが東大生に教える】Photo:Adobe Stock

「優良企業」と「優良銘柄」は同じか?

「投資で勝つ」ことについて考えてみます。

あなたは、「日本の優良企業」と聞いてどんな会社名を思い浮かべるでしょうか。

トヨタ自動車、ソニー、ファーストリテイリング、キーエンス、ファナック、三井不動産……。

それでは「日本の優良銘柄」を聞かれたら、どう答えますか? 

一瞬、悩む人も多そうです。「優良企業=優良銘柄」なのでしょうか?

もちろん、考え方によって答えは変わりますが、株式投資の世界では「リターン」だけでなく「リスク」を考えます。

一般に「リスク」というと「危険性」のことだと考える人が多いと思いますが、金融の世界では「リスク」は「変動率(ボラティリティ)」のことを言います。

たとえばAさん、Bさんの2人がそれぞれ10年間ファンドを運用し、2人とも年率20%のリターンをあげたとしましょう。どちらの運用スキルが高いのかと聞かれたら、「どちらも同じ結果を出したのだから、運用スキルは同じと考えるべきなのでは?」と思うのではないでしょうか。

金融の世界ではこのような場合、「リターンを達成するためにどれくらいパフォーマンスが変動したか」をチェックします。

「ある年は年率100%のリターンを上げたけれど、翌年には年率マイナス70%で……」といった変動率の大きい運用をする人と、毎年コンスタントに30%のリターンを上げる人がいた場合、最終的なリターンが同じであっても変動率が小さい人のほうが優れた運用者だと考えるのです。

たとえばAさんの変動率が5%、Bさんの変動率が20%の場合、同じ年率20%のリターンを上げるのに変動率が小さい運用を行ったAさんのほうが運用スキルが高かったと考えるわけです。

リターンを変動率で割った値は「シャープレシオ」と呼ばれ、シャープレシオが大きいほど運用の効率性はよいと言えます。

シャープレシオを使うと、「リターンが年率15%、変動率10%」「リターンが年率10%、変動率8%」といったようにリターンと変動率がそれぞれ異なる場合でも、運用の効率性を比べることができます。