本田健氏 絶賛!「すべての幸せがこの1冊に詰まっている!」
『92歳 総務課長の教え』の著者で、大阪の商社に勤務する92歳の玉置泰子さん。「世界最高齢の総務部員」として、ギネス世界記録に認定された現役総務課長だ。1956(昭和31)年の入社から総務一筋、勤続66年。「私に定年はない。働けるかぎりは、いつまでも頑張る!」と生涯現役を誓う“世界一の先輩”が、長く幸せに働く63の秘訣を手とり足とり教えてくれる。
「あなたに一体、何ができるの!」
【前回】からの続き
今年で勤続66年になりましたが、はじめは、ここまで長く働くとは思っていませんでした。なにしろ、入ってすぐに辞めようと思ったのですから。
入社当初、社員は10人ほどでした。小さな会社ですから、総務を担当するつもりで入ったのに、実際は“なんでも屋さん”として働かなければならなかったのです。
営業の手伝いはもちろん、お昼になったら社員の注文をまとめてパンやお弁当を買いに行ったり、社員寮で住み込みの社員の食事をつくったりしたこともあります。
自分のやりたい仕事とは違うと思い悩み、出社するのがイヤになって1週間ほど休んだこともありました。すると、会社を紹介してくれた従姉妹から、「あなたは仕事をなんだと思っているの? あなたに一体、何ができるの!」とすごく怒られたのです。
その言葉で私は目が覚めました。
「まだ何も満足にできもしないのに、与えられた仕事を途中で放り出すなんてとんでもないことだ。働いて給料をもらっているのだから、まずは与えられた仕事を着実にこなせるようにならなくては」と思い直し、それからは気持ちを新たにして仕事をしました。
それから、66年もの月日がたっていますが、新人時代の私は、それほど“甘ちゃん”だったのです。
そんな私が今日まで働いてこられたのは、何より勤務先の会社が成長を続けて存続しているからこそです。会社が存続していることに感謝しなければならないと、つくづく思うのです。
なぜなら、創業間もない頃、会社には何度か経営的な試練があったからです。
当時、社長を務めていた創業者に、どんな気持ちだったのかを生前に伺ったら、「会社は決して潰したらあかんという気持ちで踏ん張った。会社は自分のものと違うんやから」とおっしゃっていたことを、いまでもはっきりと覚えています。
会社は社員とその家族のものであり、会社が繁栄できるのは、お客様と取引先があってこそ。だから、創業者は社員と家族、お客様と取引先を大切にして、感謝していました。
その姿勢に間近で触れていた私も、「感謝」と「報恩」が人生の指針となりました。
私が元気で働けているのは、家族を含めたまわりの人たちのおかげ。その恩に感謝しつつ、なんらかの形でお返しして、誰かのお役に立つために働いているつもりです。
創業者の信念を受け継ぐ社員は、「その仕事、誰かの役に立っているか?」と問いかけながら仕事をしています。
ですから、私が伝票を1枚仕上げて持っていっても、「ありがとう、助かりました」という感謝の言葉が聞けます。すると「私も誰かの役に立てている。こちらこそありがとう」という感謝の念が湧き上がり、仕事のやりがいや働く喜びにつながっているのです。
【次回へ続く】