自動車以外の業界も
EV化を好機と捉えだした

 他にも、たとえば米国の運送業界では、UPSの子会社である「Ware2Go」がすべての荷主を対象に「カーボンオフセット配送」の提供を開始しました。カーボンオフセット配送とは、配送に際して発生する二酸化炭素を相殺(オフセット)するために、Ware2Goが荷主に代わってカーボンクレジットを購入し、荷物ごとに上乗せして請求する仕組みです。

 また、配車サービス大手の米ウーバーテクノロジーズは、2021年5月、EVメーカーの英アライバルと提携を発表しました。ライドシェアのドライバー向けEVを共同開発し、2023年中には生産を開始する予定とのことです。ウーバーは2030年までに北米と欧州で配車サービスに使用する全車両をEVに置き換える方針を示しています。

 小売や商業施設においても、EV化の流れをチャンスとして捉える大手企業の動きが見られます。たとえば、英小売大手のテスコでは、2018年より国内スーパーマーケットにEV充電スタンドを設置し、店舗利用客に対して無料で提供しています。また、米セブン-イレブンでも同様の取り組みが進んでいます。いずれはEVのシェアリングや、サブスクリプションサービス等の展開が視野に入ってくるかもしれません。

 このような従来の自動車会社とは異なるプレーヤーが、EVを大きなチャンスと捉える背景には、たとえば昨今台頭著しい中国のEVメーカー等と提携して、OEMでEVを生産し、自社ブランドのEVを展開していくといった選択肢があることも一因と思われます。現に中国では、異業種プレーヤーがEVメーカーと次々と提携し、自社EVのサービス展開に乗り出しています。たとえば、ライドシェア大手の滴滴出行(ディディ)は、EV大手の比亜迪(BYD)と共同開発したライドシェア専用車「D1」を発表していますし、検索大手の百度(バイドゥ)は、2021年1月に浙江吉利控股集団(ジーリー)と合弁会社を設立し、自ら電気自動車の製造に乗り出すようです。

 このように、海外ではテスラが仕掛け人となってEV化の流れが急速に進み、従来型の自動車会社だけでなく、新興系EVメーカー、エネルギー会社や運送会社、ひいては小売業などの商業施設までもが一気に参入しているのです。