ファシリテーター役は社内のメンバーでもOK
そして迎えた研修当日。研修はオンラインで行われ、16人の受講者が画面越しに挨拶をする。この日のファシリテーターは、数々の研修や講演を行っている板谷和代さん。この研修プログラムは、板谷講師のようなプロがファシリテーターを務めることがある一方、研修を行う個々の企業でカスタマイズできるように設計されており、ファシリテーター役は企業のダイバーシティ推進室のリーダーや人事担当者が務める可能性もある。社内でファシリテーターを立てる場合、どのようなことに気を配ったらよいのだろうか。板谷講師に聞いた。
「アンコンシャスバイアスには企業文化も影響します。だからこそ、社内ファシリテーターが実施する意義が大いにあります。(ファシリテーターと受講者が)『それって、あるよね』とわかり合える関係ですから、『教える』ではなく、誰もがこの会社で活躍したい!と思える会社になるために、『一緒に学びましょう』というファシリテーターのスタンスが大切だと思います。ただし、自社の常識が世間の非常識ということもあります。ファシリテーターになる方には客観的スタンスも忘れずにいていただきたいです」
ファシリテーターが社内メンバーの場合は、自社の常識を振り返ったうえで、客観的スタンスさえ持っていれば、同じ社員同士だからこその気づきや学びも共有しやすいだろう。
研修は、4つのパートに分かれ、パートごとに中原教授による解説動画の視聴とグループワークが行われるプログラムだ。この日は4人ずつ4グループに分かれ、オープニングでグループごとに自己紹介を行った。私が参加したグループは、私以外が全員男性。自己紹介の中に「最近のマイブーム」を紹介する項目があり、私は某アイドルグループにハマっていることを語ったのだが、「男性の皆さんはご存じないかもしれませんが……」と、つい前置きをしてしまう。言った瞬間に「これこそがアンコンシャスバイアス」と気づき、恥ずかしくなるとともに、“日常に潜むバイアス”を早くも実感することになった。
研修の最初のパートは「事前課題の振り返り」。事前に視聴した動画のポイントをもう一度おさらいし、グループごとに動画やテスト結果の感想を共有し合う。私と同じように、「予想に反してバイアスが強かった」と言う人もいたが、その逆の人も。また、「自分と同じシニア世代に対して偏見を持ってしまう」という意見もあり、なかなか興味深かった。
2つ目は、「ステレオ地雷発見ワーク」のパート。
ある企業を舞台に、社員同士や取引先相手との会話が展開されるシチュエーション動画を見ながら、ステレオタイプや偏見・思い込みによって引き起こされた「ステレオ地雷」と思われる言動を発見していく。最初は個人ワークで、発見した数をチャットに書き込む。私は16個ほど。その後のグループワークで、改めて1人ずつ指摘していくと、合計26個ほどにのぼった。これはかなり多く見つけられたほうではないのだろうか。ただ、今回は「バイアスを見つける」という目線で見たため探しやすかったが、そうでなければ、“スルー”してしまいそうな事例も多かったように思う。たとえば、「関西人は面白い」「帰国子女は自分の意見をはっきり言う」など。事例はリアルな体験談も織り込まれたもののようで、それだけ、「ステレオ地雷」は私たちの日常に深く潜り込んでいるのだと感じた。