アンコンシャスバイアスで誰かを傷つけないために
研修の最後のパートは、「明日のマネジメントの作戦会議」と名付けられたものだった。事例を知れば知るほどうかつなことを言えないと感じてしまうが、だからと言って、余計なことを言わないように、お口にチャックしてしまうのは、いちばんよくないことだという。
動画では、ステレオタイプ発言が発動する前にできる、3つのセルフチェック法を紹介。1つ目は、「“事実か、解釈か”メソッド」。決めつける前に相手の意見や考えを確認し、判断の前に事実を集めるというもの。2つ目は、「“もし、私だったらどう思うか”メソッド」。相手の視点からとらえてみるとともに、「自分の言動はプラスになっているのか?」「その言い方で成果は上がるのか?」と、マネジメントの目的をも意識する。そして3つ目は、「“本当に一般化できるのか”メソッド」。属性でひとくくりにせず、「こうあるべき」「普通はこう」といった言葉に気を付けていくこともチェックポイントだ。それでも相手に不快な思いをさせてしまったら、きっちり謝ること。うやむやにするとさらにこじれてしまう、というのは肝に銘じておきたい。
アンコンシャスバイアスは、どれだけ理解しても、自覚したとしても、ゼロにはできないもの。だからこそ、日頃から対策を立てておくことが求められる。
最後のワークでは、再発防止のための作戦会議として、バイアスやステレオタイプが出やすい場面と、その対処法を各人がシートに記入、その後、ブレイクアウトルームに分かれて、発表し合うことになった。グループの中からは、「仕事に関して、男性と女性ではできることが違うという思い込みがあったが、性別に関係なく一人一人違うということをきちんと考えるべきだと感じた」「その場で決めずに検討して持ち帰ってから話すようにする」などの意見や対策が語られ、私も深く共感した。グループワーク後にその内容を全体に向けて発表する場では、「自分のことを話すときに、自分を謙遜して『アンコンシャスバイアス』を口にしてしまう」という意見も。私自身も会話を盛り上げるために自虐的な発言をしてしまうことがある。バイアスは他人に対してだけでなく、自分に対しても存在するのだと改めて自覚した。
参加者の発表を聞いて、板谷講師はどのように感じたのだろうか。
「『動画での事例が、あまりにも日常の“あるある”でした』というご発言があってよかったな、と思いました。『え、これの何が問題なの?』『自分なら、なんとも思わないけど……』――それが、アンコンシャスバイアスです!とお伝えすることができました。上司が部下に投げる一言は、たとえ軽い気持ちでもビルの上からボールを落とす勢いになります。自分の一言でモチベーションが下がるかもしれない、傷つく人がいるかもしれないという意識が大切です」
動画の中に出てきた「他人の『靴』を履く」というフレーズを思い起こす。他者の気持ちになってみることが、やはり必要なのだろう。